洋画・映画の感想

映画「仕立て屋の恋」感想 -後半にネタバレあり- 愛する人の部屋を覗く…恋の行方が気になる恋愛映画

映画「仕立て屋の恋」感想 -後半にネタバレあり- 愛する人の部屋を覗く…恋の行方が気になる恋愛映画

フランス映画「仕立て屋の恋」を鑑賞しました。
雰囲気から感じた印象としては、大人のしっとりした恋愛映画なのかな?と思っていたのですが、どうやら違う…。
これは恋愛映画でありつつ、ちゃんとした変態映画でした。

主人公の孤独に生きる仕立て屋のイールは、向かいのアパートに暮らしている 若くて美しい女性(アリス)の部屋を覗くのを 唯一の楽しみとして生活しています。
もうこれだけでも充分ヤバイんですが、そこに殺人事件が起きて 刑事に目をつけられたりするので、観ていくうちに少しずつ引き込まれていく…
基本的に静かな映画ですが、だんだん この後どうなるんだろう?という気持ちになっていく。

Amazonプライムでは評価が高い作品なので 好きな人は好きだろうなぁと思います。
(私も評価が高いのにつられて観てみようかな と思ったので)
とはいえ 賛否が分かれる作品だろうと思います。
面白くてハラハラドキドキするような作品ではないですが、私は個人的には好きな作品となりました。
なんとなくお洒落で 静かで、少し心が苦しくなるような…フランスらしい恋愛映画だったと思います。

以下、簡単なあらすじと ネタバレ感想を書いていきます。


 

作品詳細

製作年 1989年
製作国 フランス
上映時間 80分
監督 パトリス・ルコント
出演者 イール / ミシェル・ブラン
アリス / サンドリーヌ・ボネール
エミール / リュック・テュイリエ
刑事 / アンドレ・ウィルム、他

1933年に書かれた、ジョルジュ・シムノンの小説(原題:Les Fiançailles de Mr Hire)が原作となっています。
そして、同原作は1946年に、ジュリアン・デュヴィヴィエ監督が制作した『パニック』のリメイク作品です。
同監督作品に「髪結いの亭主」もあります。

簡単解説

殺人事件の容疑者として浮かび上がった、前科を持つ仕立て屋の男イール。しかし彼は犯人ではなく目撃者だった。孤独な生活を送るイールは、向かのアパートに住むアリスを覗き見ているうちに彼女に恋をし、そしてある日、犯行の現場を見てしまったのだった。監督は「髪結いの亭主 」のパトリス・ルコント、音楽は「ピアノ・レッスン」のマイケル・ナイマン。
映画.comより

↓Amazon Primeで観てみる↓

仕立て屋の恋

基本的にネタバレを気にせずに書いているので、未見の方でネタバレしたくない方はご注意ください。

孤独な中年男“イール”について

映画「仕立て屋の恋」感想 -後半にネタバレあり- 愛する人の部屋を覗く…恋の行方が気になる恋愛映画(C)1989 – CINE A – France 3 FILMS PRODUCTIONS – HACHETTE PREMIERE & Cie

仕立て屋のイールはとても几帳面で 身なりはとても綺麗ですが、過去に性犯罪歴がありひっそりと暮らしています。 イールの楽しみといえば向かいのアパートに暮らしているアリスの部屋を覗くこと。自分の部屋の電気も付けず お気に入りのレコードを聴きながら覗いています。
もうこれは完全にストーカーですね…。他の女性には興味は無いようなので とにかくアリスに恋をしているようです。
この時点でこちらが知っている情報は 性犯罪の前科があるということと、若い女性に恋愛感情を持ち 毎日部屋を覗いているということだけなので 正直気持ちが悪いんですよ…。
几帳面で綺麗好きである面は 個人的に好きなところでもあるのですが…。
(度が過ぎているとちょっとアレですが…)
あと、ボーリングがめちゃめちゃ上手い。普段は人と一切関わらないイールもボーリングの時はちょっと人気者っぽくなっていました。
(であればボーリングを通じて友人の1人ぐらい居そうなのに 友人は居ない…と。とても不思議…)

ある日、雷の稲光によってアリスに覗いていることがバレてしまい 2人の関係に変化が起こり、急接近することになります(このシーン、気味が悪すぎました^^;)。

正直、この状況から恋愛が成就するわけがないんだけど、ストーリーが進んでいくにつれ イールと同じように「ほんの僅かな希望の光」を見つけてしまうんですよね。
もしや 案外 成就するのかも?とさえ思ってしまったり。
少しでも夢を見て 期待してしまったからこそ ラストの展開は心が苦しくなった。

若くて美しい女性“アリス”

映画「仕立て屋の恋」感想 -後半にネタバレあり- 愛する人の部屋を覗く…恋の行方が気になる恋愛映画(C)1989 – CINE A – France 3 FILMS PRODUCTIONS – HACHETTE PREMIERE & Cie

イールに毎日覗かれているアリスです。最初は覗かれていることに気付いていないので被害者でもあります。最初アリスに対しては“可哀想だなぁ…”という印象。
お洒落で美人でスタイルも良く、明るい性格のアリスには婚約者もいます。
ほぼ完璧な状態。私が若い頃はこんなんじゃなかったなぁ〜なんて思いを馳せながら観ていました(笑)。
ただ、ストーリーが進んでいくと アリスにはアリスなりの悩みと秘密が隠されていました。婚約者のエミールという男は結婚の約束はしているものの あまり乗り気ではないようだし、クズ臭がプンプンしています(殺人を犯して逃亡しているので まぁ簡単に言うとクズなのですよね)。
しかしアリスはそれでもエミールを愛しているわけで これはツライです。
第三者の目からみれば 絶対に幸せになれないとわかり切っている相手です。どんな事情があったにせよ 結果的にエミールは若い女性を殺害している。
殺すつもりはなかったと言っているけど、どんなつもりであっても 殺害している事実。恐らく暴行もしているのではないか?と思うので。
若い頃はちょっと悪そうな人に憧れてしまう気持ちもわかるのだけど、悪すぎるでしょう…。

イールに目をつけた刑事

殺人事件の容疑者として 過去に性犯罪歴のあるイールに目をつけ、何度もイールの家を訪ねてくる刑事です。この刑事に関しては刑事としては無能だったなぁという感想しかないです(笑)。
過去の性犯罪歴となんとなくイールが犯人に違いない!という思い込みだけで捜査している感じと、アリスの証言の裏付けも取らずにイールが犯人だと確信してしまったり(まぁ実際に怪し過ぎるし、そりゃそうなんですけども)。
どうにかしてイールを犯人にしたい(自分の勘は正しいはず)という思い込みのせいで、結局自力では犯人にほんの少しも辿り着けないまま終わってしまって残念だった。
ルパンと銭形刑事みたいに なんだかんだ心が通いあっている感じも一切ないのに 妙に知った仲であるかのような接し方なのも 違和感が残る…。まぁ違和感なんて他にもっと沢山あるんですけどね…。

アリスの思惑

映画「仕立て屋の恋」感想 -後半にネタバレあり- 愛する人の部屋を覗く…恋の行方が気になる恋愛映画(C)1989 – CINE A – France 3 FILMS PRODUCTIONS – HACHETTE PREMIERE & Cie

自分がずっと覗かれていることに気付いた場合、普通は警察に通報すると思うんですけど アリスは逆にイールに接近し 誘惑したり気のある素振りをしたりしています。
(トマトをゴロゴロ転がして近付くのはちょっと無理があります^^;)
もちろんイールに好意を持っているわけではありません。多分 気持ち悪いと思っている。
ではなぜイールに接近したかというと、確認したいことがあったからですね。
婚約者のエミールが殺人を犯した日、エミールがアリスの部屋に来たことや アリスが証拠隠滅の協力をしていたことを イールは目撃してしまったのか。もし見てしまっているなら なんとかして口止めをしようと思ったのかもしれません。イールは自分(アリス)に好意を持っているのはわかっているので 試しに色仕掛けをして様子を伺っていたのだと思います。

ただ、中盤くらいから不思議とイールに心が向いているような場面もありました。
デート中にキスをしたり。イールをなんとなく優しく見つめる雰囲気があったり。
本当のところはわからないままですが、アリスの中で少しはイールに気持ちが向いていたのは確かなんじゃないかと思います。と言うか、そうであって欲しい…。
そうじゃないとあまりにイールが不憫なので。

イールから見える視点

一方的に好意を持ち 毎日部屋を覗き見ていた女性が 自分に接近してきた場合、少し警戒はするものの 普通なら舞い上がってしまうと思います。明らかに急接近してくれば余計に。
ですが イールはアリスの思惑を全て見抜いていました。自分に好意があって近付いてきたわけではないと。事件のことを知っているのかどうか、目撃してしまったのかどうかを確認するために近付いていきたことも。
中盤でイールは事件のことは知っているし、アリスが恋人を庇って協力した場面も見たと伝えています。そのことを伝えられたアリスは 戸惑いつつも更にイールと距離を縮めていきました。

イールとしては アリスに恋をして 部屋を覗き見ることだけが唯一の楽しみだったわけです。
アリスを愛しているので イールは絶対に通報しないとアリスに伝えます。
それまでは風俗を利用して性処理をしていましたが、アリスと出会ってからは風俗に行っても話をするだけ。イールにとってはアリスの存在がとても大きいものになっています。
(風俗でひたすら話を聞かされている相手がちょっと可哀想でしたが^^;)
なので事件のことを通報して アリスが自分の目の前から消えてしまうことの方が恐怖です。

全てのことからアリスを守るから一緒にスイスに逃亡しようとチケットを渡しますがアリスは現れませんでした。
イールにしてみれば 一世一代の賭けだったのでしょうが、よくわからない人と一緒に逃げるのは アリスにとってはリスクが大き過ぎますね…。

個人的に嫌だなぁと思ったシーン

観ていて「うわぁ…」って思ってしまったシーンを挙げてみようと思います。
(完全な個人的感想です)

アリスの部屋が丸見えすぎる

向かいの家には誰も住んでないと思っていたと言っていましたが、年頃の娘さんなのだしカーテンくらいはつけようよ!って思っちゃいました。夜とか丸見え過ぎる…。
そりゃイールじゃなくても見ちゃうよ…。超高層ビルでもない限りカーテンはつけた方がいい(しつこい笑)。

アリスの身体を触るシーン

エミールとアリスが観戦している中(2人の位置は離れていた)、アリスの後ろに立っているだけでも異常な状況だと思うんですけど(ストーカーの様につきまとっている感じが…)、どさくさに紛れてサワサワと触り始め ボタンを外して手を入れたり スカートの中にまで手を伸ばしていました。相思相愛であれば (100歩譲って^^;)まぁそんなプレイなのかなって思えるんですけど、まだアリスとしてはイールに対して恋愛対象としては見ていないはずです。イールの行為が痴漢してるみたいで少し気持ち悪かった。ですが、アリスもなぜか受け入れている感じでしたよね…。
映画としてはこういうシーンがあった方が面白いんだろうけど(実際少しドキドキするシーンではあった)、アリスの本心がわからないので 少しモヤモヤします。

ネズミの末路…

イールがペット?として飼っていたネズミ達…。アリスと逃亡しようと試みた日にネズミを放していました。簡単に言うと捨てたということ。大量の餌を撒いていたので「ネズミ達が当分は食べていけるように 撒いてるのかな」って思ったんですが、線路沿いに餌を撒いている…。餌につられたネズミ達が列車に轢かれて死なせるのを前提とした餌やりです。
これは酷い…。飼い主の責任として?後始末したのかもしれない。確かにネズミを放せば迷惑になるだろうし、ネズミ嫌いな人に結局殺される確率も高いけど、飼い主の都合で檻に入れたり殺したりするのは 単純に酷いなぁと思った。
(猫と暮らす前はキンクマハムスターを飼っていたから余計にそう思うのかも…)

まとめ

映画「仕立て屋の恋」感想 -後半にネタバレあり- 愛する人の部屋を覗く…恋の行方が気になる恋愛映画(C)1989 – CINE A – France 3 FILMS PRODUCTIONS – HACHETTE PREMIERE & Cie

観終わった後に なんかモヤモヤして心苦しくなるような作品でした。
ずっと守るから一緒に逃げようと切符を渡した日、結局アリスは現れませんでした。
なんとなくわかってはいても、もしかしたら現れるのでは?と少し期待している自分にちょっと驚いたり。
アリスが現れず落胆して帰宅したイールに 更に追い討ちをかける出来事として アリスの裏切りがあります。
アリスが持っていた殺人事件の証拠品を イールの部屋で見つけたと嘘をつき、イールを犯人に仕立て上げました。
ショックであると同時に、冷静に考えれば まぁそうなる可能性もあるよね…と。

イールの視点から見れば ずっと片想いしていた女性と 一緒になれるかもしれない、という壮大なラブストーリーなのかもしれないけど、アリスの視点からみるとイールは自分の知らないうちに部屋を覗いていた気持ちの悪い人でしかない。
さらにイールは殺人事件の証拠を掴んでいる訳で、要はアリスは ただ弱みを握られている状態だったというだけなんですよね。
身体を触られたりした時も 本当は嫌だったかもしれないが、弱みを握られていれば多少我慢もするかもしれない。

イールは純粋な気持ちで「すぐに好きなってくれなくてもいい」と言っているが、アリスからしてみれば 仮に一緒に逃亡したとしても 鎖に繋がれた囚人と同じような心理状態になることはわかり切っている。弱みを握られた相手と対等でいることは不可能なので。
イールを犯人にしてしまえば愛する人(エミール)の殺人疑惑が晴れて再会できるかもしれないし アリスにとっては好都合です。
ただ、個人的にそれはクズな思考だなって思います。
アリスは被害者でもあるけど、ずる賢くて最後まで好きになれなかった…。
というか、全体を通して好きになれる登場人物が誰も居なかったのは少し残念です。
(それによって誰にも感情移入できなかった気がします)

イールはラストで究極の選択を迫られます。
・愛するアリスのために自分が犯人になるか。
(その場合、アリスはエミールのところへ行ってしまうだろう)
・本当のことを警察に告げるか。
(その場合、アリスは警察に捕まりイールの前から消えてしまう)
どちらの選択をしても、アリスはイールの前から居なくなり 会えなくなる…という選択しかない訳です。
自暴自棄になってしまう気持ちもわからなくもないですね。
でも、本気で逃げようと思ったら屋上には行かないと思います。行き止まりになるのは目に見えているので…。冷静さを失って屋上に向かった可能性もありますけど。
逃げようという気持ちもありつつ、心のどこかで「もうどうなってもいい」という投げやりな心情も受け取れたので、事故であり自殺でもある気がしました。

「君を少しも恨んではいない。ただ死ぬほど切ないだけだ。君は喜びをくれた」

この台詞がとても切なかった…。
落ちる瞬間、お互いどんな想いだったのか想像すると更に悲しくなる。

結局 イールは刑事宛に真実を書いた手紙を残していたので、アリスは罪に問われることになるでしょうね。誰も幸せになれない切ない結末でした。

原作だと人種差別の問題なども重視しているようなので もっと細かい背景や心情が考察できそうです。
(迫害されていたユダヤ人であるイールと フラン人であるアリスの関係性など)

観終わった後に色々と考えてしまう内容で、個人的にはとても興味深い映画でした。

created by Rinker
¥749
(2020/09/30 21:45:30時点 Amazon調べ-詳細)

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA