楽しみしていた「アド・アストラ」を鑑賞してきました。
ざっくり言うと宇宙で行方不明になった父親を捜しに行くというストーリー。
父親は宇宙飛行士で地球外知的生命体を探しに宇宙へ旅立ったまま音信不通に…。
英雄と呼ばれている父親を探すため、ロイも父を追って宇宙へと旅立つ。
まず、美しい宇宙の映像に圧倒されます。
そして、とても静かな映画でした。
勝手に宇宙を背景とした派手なシーンがバンバン出てくると予想してましたが、最後までひたすら静かに進行していきます。
なので 良くも悪くも期待を裏切る作品だなぁと感じました。
宇宙の話であり、父と息子の話であると同時に 私達の心の中にある闇の話でもあると思います。
以下、簡単なあらすじとネタバレ感想を書こうと思います。
簡単なあらすじ
ブラッド・ピットが宇宙飛行士に扮し、トミー・リー・ジョーンズと父子役で共演した主演作。広大な宇宙を舞台に、太陽系の彼方に消えた父の謎を追う姿を描く。地球外生命体の探求に人生をささげ、宇宙で活躍する父の姿を見て育ったロイは、自身も宇宙で働く仕事を選ぶ。しかし、その父は地球外生命体の探索に旅立ってから16年後、地球から43億キロ離れた太陽系の彼方で行方不明となってしまう。時が流れ、エリート宇宙飛行士として活躍するロイに、軍上層部から「君の父親は生きている」という驚くべき事実がもたらされる。さらに、尊敬する父が太陽系を滅ぼしかねない「リマ計画」にかかわっているという。危険な実験を抱えたまま姿を消した父を捜すため、ロイも宇宙へと旅立つが……。ピット、ジョーンズのほかリブ・タイラー、ルース・ネッガ、ドナルド・サザーランドが共演。監督は「エヴァの告白」のジェームズ・グレイ。
映画.comより
基本的にネタバレを気にせずに書いているので、未見の方でネタバレしたくない方はご注意ください。
作品詳細
製作年 | 2019年 |
---|---|
製作国 | アメリカ、ブラジル |
上映時間 | 124分 |
監督・脚本 | ジェームズ・グレイ |
出演者 | ブラッド・ピット / ロイ・マクブライド トミー・リー・ジョーンズ / H.クリフォード・マクブライド リヴ・タイラー / イヴ ルース・ネッガ / ヘレン・ラントス ドナルド・サザーランド / トム・プルーイット大佐、他 |
「アド・アストラ」の感想
映画.comより
観終わったあと、頭を整理するのに時間がかかるような作品だと思いますし、今もまだよくわからない部分が多く 解釈が難しい。
圧倒されるほどの宇宙の広さと美しさを背景に、行方不明の父親を捜しに行くロイの心の変化を 静かに見守っていくストーリー。
まず前提としてあるのは、ロイは父親のことをあまり良く思っていないということ。
ただ単に「嫌い」という単純な感情ではなく、嫌いという感情の中に怒りや寂しさや愛しさという様々な感情が複雑に入り乱れている。
家庭を顧みず、仕事ばかりだった父親のせいで 家族は多大な犠牲を払うことになった。父親が行方不明になったことで未亡人となってしまったロイの母親は病気がちになり、ロイは心を閉ざすようになってしまった。
ただ、同じ宇宙飛行士の道へ進んでいるので、心のどこかで父親に憧れ、尊敬する気持ちもあるのだろうと思います。
ただ、どんなことがあっても常に心拍数は安定し 何事も動じないロイは、宇宙飛行士としては優秀だが その代償として感情がほぼ死んでいる…。
感情に蓋をして、何も感じない人間になってしまった?ように見える。
映画の中でロイ自身も「人間関係を続けるのが 難しい人間になってしまった」というようなことを言っているシーンがある。
父親と良い関係が築けなかったことが原因…というニュアンスで話していたので、ロイ自身も父親が原因で自分の感情が死んでいるという自覚があるようだった。
(イヴという恋人がいるけど、ロイが心を閉ざしたことによって うまくいっていない…)
ロイにとって父親は 英雄であると同時に感情を乱す脅威であったけれど、ロイだけではなく 地球にとっても脅威であることが判明し、何としてでも見つけ出さなくてはならなくなった。
地球にとって危険な実験「リマ計画」に関わっているという。
(この実験中に地球を脅かすサージが発生したとのこと)
ストーリーが進むにつれ、あ~これは地球を救おうっていうストーリーでもあるけど ロイを救うストーリーなのだなぁと気付いた。ロイが心に蓋をして見ないようにしていた痛い部分と いよいよ正面から対峙しなくてはいけない時が来たのだと思う。
「父親が生きているかもしれない」と聞かされて、常に安定していた心拍数が乱れ、感情が不安定になってしまうロイ。宇宙飛行士としては優秀ではあるけど、実はとても繊細で弱い人間でもあった。
弱いというよりは単純に「父親」が弱点なのだと思う。地球を救うためには 同時に自分の弱さを克服しなくてはいけない…これはロイにとってはなかなかハードルの高い任務だったと思う。
父は 海王星に地球外知的生命体を探しに行ったが、結果的に地球外知的生命体は見つかっていない。しかし どうしても見つけたいということで、地球に帰りたがっている仲間と対立してしまい、その争いのせいで父以外の乗組員が亡くなってしまう。
一方、ロイは 自分の任務を遂行するために 核爆弾を積んだケフェウス号に強引に乗り込む際に 乗組員を不幸な事故で死亡させてしまう。
任務に対して周りと合わすことが出来ず、周りを犠牲にしてでも自分の野望を果たそうとする姿は 皮肉にも父と似てしまっていることに気付き、ロイは悶々と考える…広い宇宙空間の中で、ただただ 悶々と考える…考える…考える…。
もう、本当にひたすらロイが自分と向き合って内省しているシーンが多いのです。
(スクリーン一杯の美しい宇宙、静かなBGM、ひたすら考えているシーン…眠くなったという人が多いのは当然かもしれない^^;)
宇宙の話というよりは、人間(親子)の話が軸となっているので、それであれば“宇宙”をテーマにしなくても良いのでは?とも思ったりしたのだけど、やっぱり“宇宙”でなくてはいけないんだな…と気付きました。
宇宙は無限で未知の世界であり、誰もが簡単に行ける場所ではなく 下手すれば自分の命も危険に晒される場所ですが、宇宙空間というのは 人の心の奥にある“潜在意識”ととても似ているなぁと感じました。
自分自身でも意識していない潜在意識(未知の部分)には、蓋をして見ないようにしていたトラウマや辛い記憶が残っていると言われています。
ロイは父を捜しに 広い宇宙をたった一人で彷徨い、ひたすら考え続けていました。
これは 自分の心と向き合って どんどん深い場所へ、到達したことなのない“潜在意識”へと向かっていった ということだと思います。
父と再会したことで ロイは自分の本心を見つけたのだと思う。
父は地球に未練はなく これからも地球外知的生命体を探したいと言い、一緒に探そうとロイを誘いますが、ロイはこの誘いを断り「一緒に地球へ帰ろう」と告げます。
自分自身と向き合い続けて 考えた結果、ロイは地球に戻り「人を愛する」という人生を生きようと決心します。
これは父との決別でもあり、過去の自分との決別でもあると思います。
月までロイと一緒に同行したトム・プルイット大佐が(体調不良で一緒に火星に行けなくなってしまった父の旧友)、父について「地球外生命体を探しに宇宙に行くというのは、ある意味 逃避でもある」というようなことを言っていました。
ロイは感情を失い 心を閉ざしているが、父はそれ以上に宇宙に「逃避」し、宇宙に引きこもっているという状況だったのだと思う。
ロイも父と同じ道を辿ろうとしていたけれど、勇気を出して父とは違う道へすすんだ、ということですね。
派手なアクションはほとんどないし、孤独の中で考え続ける…という静かな映画ではあったけど、ロイの中では壮絶な戦いがあったのだと思う。
(ハタから見ると何も起きてないように見えますが…笑)
そう考えると、とても深くて良くできているストーリーだなぁと改めて思うし、まだまだ掘り下げると 色々な考察が出来そうな気もしました。
ただですね、気になる点が無かったと言えば嘘になります。
ロイが強引に乗り込んだケフェウス号ですが、発射直前で下から乗り込むっていうのは可能なのだろうか…と思ったり。
(発射10秒前位だと灼熱なのではないかと…)
宇宙を漂っているシーンでも、何かの板?を剥がして 隕石から身を守りながら進んでいたけど、ちょっと無理があるような…。そして進みたい方向へ進めるものなのか…。
(隕石に当たったらどんなに小さくてもカツンカツンって軽く当たるだけでは済まない気がしてしまう)
そもそも宇宙服と剥がした板だけで 宇宙空間を漂っているのも ありえないような気がしています(笑)
(まぁ、ロイは宇宙から地球に落ちてもパラシュートで助かっちゃう幸運の持ち主なので これはこれであり得るのでしょう)
ツッコミ大好き人間なので どうしてもツッコミどころを探してしまいますが、宇宙に関して私は全然詳しくないので もしかすると板を使って自由自在に動ける世界なのかもしれないし、単に私が無知なだけの可能性もあります^^;
色々突っ込みましたが 総合的には何回か観ることで より深い解釈が出来そうな映画で、とても好きな部類の映画でした。
最後まで読んで頂き ありがとうございました*
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