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映画「鑑定士と顔のない依頼人」ネタバレ感想

映画「鑑定士と顔のない依頼人」ネタバレ感想
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なんの予備知識もなく観たのですが ラストの衝撃がすごかったです。というか、予備知識を入れずに観た方が絶対面白いと思いますので、未見の方は記事を読まない方が良いと思います。
「シックス・センス」や「シャッターアイランド」を観た時もそうだったのですが、この映画も2回以上観たくなる映画だと思いました。
答え合わせしたり、色んな細部をチェックしたくなる…。観れば観るほど色んな発見があって、観る人によって色んな解釈ができる映画だと思います。

 

作品詳細

製作年 2013年
製作国 イタリア
上映時間 131分
監督・脚本 ジュゼッペ・トルナトーレ
出演者 ジェフリー・ラッシュ / (役名)ヴァージル・オールドマン
ジム・スタージェス / ロバート
シルビア・フークス / クレア
ドナルド・サザーランド / ビリー 、他

簡単なあらすじ

鑑定士と顔のない依頼人の概要:孤独で女性不振な天才鑑定人ヴァージルの元に、孤独な女性から鑑定依頼が入る。クレアは両親を失ってから天涯孤独だった。病気のせいで外に出れない彼女に惹かれて行くヴァージルは奇妙な事件に巻き込まれる。
MIHOシネマより

見どころ

名匠ジュゼッペ・トルナトーレ監督が、刺激的な謎をちりばめて紡ぐミステリー。天才鑑定士が姿を見せない女性からの謎めいた鑑定依頼に翻弄(ほんろう)されていくさまを、映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネの音楽に乗せて描く。偏屈な美術鑑定士には、『シャイン』などのジェフリー・ラッシュ。共演には『アップサイドダウン 重力の恋人』などのジム・スタージェス、ベテランのドナルド・サザーランドらが名を連ねる。
シネマトゥデイより

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基本的にネタバレを気にせずに書いているので、未見の方でネタバレしたくない方はご注意ください。

有名な鑑定人であるヴァージルについて

映画「鑑定士と顔のない依頼人」ネタバレ感想
映画.comより

天才的な審美眼を誇る鑑定士ヴァージルは有名な鑑定人であり オークショナーですが、人を一切信用せず極度の潔癖症。恋人を作ったこともなく独身。人との接触(特に女性)を避け常に手袋を着用している(手袋のコレクションもすごい…)。しかし女性に全く興味がないという訳でもないようで、隠し部屋に不正により手に入れた大量の女性の肖像画を飾り、ひとりで楽しんでいる。絵画の女性達が恋人という感じですね。とにかく仕事一筋で生きてきた人です。

そもそもなぜヴァージルがこんなに人を避けるような性格になってしまったのか?と少し考えてみると、中盤でクレアとの会話の中で「親を亡くし、孤児院で育った」という話をしているので、子供時代がなかなか過酷だったのかもしれません。そこから大人になり成功を収めているのだから 相当努力したのだろうなぁと推測します。そうなると信用できるのは自分自身だけなのも納得ですね。

ヴァージルの相棒「ビリー」

映画「鑑定士と顔のない依頼人」ネタバレ感想
Amazon Prime Videoより

ヴァージルと手を組んでオークションでサクラをしているビリー。安く落札し高く転売するヴァージルの長年の相棒であり、二流の画家である。ヴァージルに「君には内なる”神秘性”が欠けている」と言われ 画家としては認めてもらえず成功することを諦めている。この映画を既に観ている人がこの記事を読んでいるであろうという前提で書いてしまいますが ビリーの黒幕っぷりは衝撃でした。後で触れますがヴァージルに対して余程恨みや妬み?を持っていたのだと思います。

広場恐怖症で15年間外出していない「クレア」

映画「鑑定士と顔のない依頼人」ネタバレ感想
映画.comより

両親を亡くし一人で暮らしている27歳の女性。今回の「顔のない依頼人」です。広場恐怖症で外出できず、15年間この家の中だけで生活している。ヴァージルに鑑定の依頼をするも約束を守らなかったり 顔を見せず怒らせてばかりでした。

約束の時間にすっぽかされ雨ざらしになったりすれば、多分 誰もがイライラするのではないかな?と思いますが。恐らく相手を怒らせたりして感情を掻き乱すことも含めて罠だったのだと思いますが、怒らせすぎて本当に連絡が取れなくなる恐れもあったと思うので そこはかなりの賭けにでたのかな、と思ってしまいます。

ヴァージルが懇意にしている機械修理人「ロバート」

映画「鑑定士と顔のない依頼人」ネタバレ感想
映画.comより

ヴァージルが懇意にしている機械修理人です。腕はかなりのもので あらゆるものを作ってしまう。クレアのヴィラで拾ったオートマターの部品が 希少な18世紀の機械人形のものであることが判明し度々訪れるように。ヴァージルが足しげく通っていることを考えると人嫌いなヴァージルにしてはまぁまぁ心を開いている人物だったと思います。ヴァージルとは正反対で女性の扱いに慣れており、恋人がいても他の女性と仲良くしたりするシーンも。そんな姿を見ているヴァージルからするとクレアにも手を出されるのではないかとヒヤヒヤしてしまう気持ちもわからないでもないですね…。
(ならば会わせなければ良かったのでは…と少し思ってしまいますが、恋愛の相談相手だから美しいクレアを見せたかったのかもしれません)

最初は険悪だったのに次第に惹かれ合う2人…

映画「鑑定士と顔のない依頼人」ネタバレ感想
Amazon Prime Videoより

15年も引きこもっていた割には めちゃくちゃ容姿端麗なクレアです(美容院とかエステにも定期的に通っているような感じw)。女性と縁がなかったヴァージルはクレアにどんどん惹かれていくようになります。最初は顔の見えないクレアに対して激ギレしたりしていましたが、自分と似ていることを指摘されたり 一瞬だけ見える眼や 母親だと教えられた絵画の女性が美しかったりして ヴァージルの期待値は上がっていきました。そしてついに帰ったフリをしてクレアを覗くという行動に出てしまいますが、そこで見たクレアがめちゃくちゃ美しかった訳ですから これは誰だって好意を持つと思います。ちょっとヴァージルを振り回して困らせたりするのも ヴァージルにとっては「放っておけない」という要素になるので、どんどん深みにはまっていきますね…。(男女共にこういう魔性なタイプって意外といるような気がします)

作戦通りヴァージルとクレアは惹かれ合い、ヴァージルはクレアにプロポーズ。クレアもこのプロポーズを承諾し結婚することになるのだけど これは本当にすごいことだと思う。そしてラストのことを考えると胸が痛すぎてツライ…。

どんでん返しのラスト

映画「鑑定士と顔のない依頼人」ネタバレ感想
映画.comより

クレアにぞっこんになったヴァージルは、残りの人生をクレアと出来るだけ多く過ごしたいと思ったのか あれほど一筋に頑張ってきた仕事を引退することを決意します。最後の競売会場では様々な人に祝福され、幸せ絶頂のヴァージルです。
しかし 早くクレアに会いたくてウキウキしながら帰宅すると クレアがどこにもいない。クレアがヴィラから持ち込んだ母親の絵画を隠し部屋に運び入れると コレクションしていた絵画が根こそぎなくなっていることに気付く…。唯一残されたのは復元された機械人形だけ。
肖像画の裏には「親愛と感謝をこめて」とビリーの署名があり、ロバートも元のクレア宅はもぬけの殻。連絡も一切取れない状態になっていた。
更に本当のクレアはヴィラの前のバーにいる小人症の客であり、ヴィラの持ち主でもありました。

このシーン、かなり衝撃的でした。 絵画が一枚も残らず盗まれたと知った時のヴァージルの絶望感がすごかった。鈍器で頭を殴られているような 失神するくらいのショックを受けていて見ていてツラかったですね…。大事にしてきた絵画が盗まれたことも大きなショックですが、愛する人に裏切られたショックと、信用していたロバートと相棒だったビリーに裏切られたショックが大きすぎる。唯一ヴァージルが心を開いた人間だったのに…。

様々な伏線の解説

映画「鑑定士と顔のない依頼人」ネタバレ感想
映画.comより

この映画には至る所に伏線があり、それらを確認するために2回以上観た人も多いと思いますが、ここで改めて伏線について触れてみます。

クレアは覗かれていたことに気付いていたのか?

1度目に覗かれていた時は気付いていなかったと思いますが、2回目に覗かれた時は気付いていた可能性が高いです。というのも、ヴァージル自身がロバートに覗いてしまったことを話していたので、ロバートからクレアにその情報は筒抜けだったと思います。2回目に覗かれた時は電話でわざわざヴァージルのことを「信頼できる人」と話題にしたり、体を見せつけるような行動をしていました。

クレアが失踪した理由は?

クレアは引きこもっていることを演じているだけで普段は何度も外出しています。(バーにいる本物のクレアも偽物のクレアが何度も外出しているのを見ています)
この日はクレアが居ない日に ヴァージルが抜き打ちのような形で突然訪ねてきてしまったので 失踪騒動となってしまったようです。絶縁されていたロバートもなぜか必死にクレアを探すことに協力していますが、作戦が危うくなり懸命に立ち回っていたということになります。

クレアはなぜヴィラのものを売りたくないと言い出したのか

あれほど時間をかけて査定をし カタログまで完成したにも関わらず、クレアが急に「やっぱり売りたくない」と言い出します。普通であればとんでもないことだと思いますが、クレアにぞっこんのヴァージルは快諾し カタログをその場で破きます。
この時にロバートが少しソワソワした仕草を見せますが、初めて観た時は「土壇場になってキャンセルなどできない」とヴァージルが怒り出すかもしれないとソワソワしているように見えました。
ですが、ヴィラにあるものはレンタルしているものや 本物のクレアが持ち主の為、売られてしまっては困ります。ロバートのソワソワした表情は作戦がうまくいくかどうか…とソワソワしていたということになります。

ビリーのうっかり発言

結婚後はクレアとの時間を優先にするため、引退することを決意したヴァージル。最後の競売会場ではずっと相棒として過ごしてきたビリーに声を掛けられますが、その際にビリーが「会えなくなると寂しいよ」と言います。ヴァージルは「会えなくなるのか?」と聞き返しています。
ヴァージルからすると引退してもいつでも会える関係であるはずなのに もう会えなくなる、と伝えられるのは違和感がありますよね。実は この時には既に隠し部屋から全ての絵を運び出しており、あとは行方をくらますだけでした。ビリーからすると「もう会えない」のは本当のことですが、うっかりした発言だったと思います。

車の中の発信機

この発信機、どこかで見たことあるなぁって思っていたら ロバートの工房に来ていた客に渡していたものと同じものでした。「居場所がわかる」と説明していたことから ヴァージルの居場所や行動も この発信機でバレバレだったと思われます。

クレア(本物)の能力

ヴィラの前のバーにいる本物のクレアは、なんでも瞬時に暗記したり計算が出来てしまう特殊な能力の持ち主でした。ニセモノのクレアが失踪したと騒動になった際に本物のクレアが「231」と言っていたのです。これはクレアが外出した回数ですが、この時は何のことかわからずスルーしてしまいました。(というか、常に何かしらの数字をつぶやいているので注目できなかったです)

残されたオートマタ

絵画を盗み出した後、復元されたオートマタだけがぽつんと置かれ「いかなる贋作の中にも必ず本物が潜む」と繰り返しています。このシーン…本当にシュールでした。隠し部屋でショックを受けているヴァージルが更に寂しく孤独に見えるシーンでしたが、なぜわざわざこんな小細工をしたのか…。あるシーンでヴァージルが「贋作者は自分の印を残したくなる」と言っていることから、ロバートも自分がこの詐欺に関与した証拠を残したのだと思われます。
もちろん希少な部品であることも嘘なので オートマタに金銭的価値は全くないです…切なすぎますね…。

まとめ ハッピーエンド?!

映画「鑑定士と顔のない依頼人」ネタバレ感想
Amazon Prime Videoより

この映画、一体なんだったんだろう?ってしばらく考えてしまいました。人間不信で人との交流を遮断した男性が、同じように心を閉ざしている美しい女性と鑑定をきっかけに少しずつ惹かれあっていく(それなりに障害もあるだろうけど、それを一緒に乗り越える)ストーリーなのだと思っていたので 観終わった後、呆然としてしまいました。

単純な感覚としてヴァージルの本来の「他人を信用しない」性格でいた方が、これほど失うこともなかったように思います。
やっぱり人なんて安易に信じるものではないな…と思ってしまいそうになるけど、ヴァージル自身がこの歳になるまで人とちゃんとした信頼関係を築けていないからこそ騙されてしまったとも思えます。人間に対して不慣れ過ぎるというか…。

最終的にヴァージルは精神的に追い詰められて病院に入院していました。愛する人と相棒、信用していた友人(機械職人)に裏切られたのだから当然ですが、そもそもがヴァージル自身も大して相手のことは想っていなかった様にも思う。
ビリーに対して「絵が好きなだけでは一流になれん。君には“内なる神秘性”が欠けている」と言ったりしています。相手を思いやっていたら傷付くかもしれない発言は普通はしないと思いますし、ロバートに対してもただの嫉妬心から「君は信用できん!」と簡単に絶縁してしまうし、クレアに対しても愛しているというか恋しているようにしか見えなかった(単純に容姿が気に入っているだけのように見える)。冒頭で誕生日のお祝いに とケーキを出されても手を付けなかったり振り返ってみるとヴァージルは色んな人に対して 心ない対応をしています。長い人生を考えると相当な数の人達を傷付けていたのかも…。

そう考えると、愛する人と大事な絵画を全て失ったことは本人の考え方を変えるには良いきっかけだったのかもしれないとも思う。(だとしても荒療治ですがw)

最後のシーンでクレアと以前話したことのある喫茶店で、クレアを待ち続けているようなシーンがありますが 以前のヴァージルだったら自分を裏切った人間を待つことなど絶対にありえないことだと思います。(しかもわざわざ引っ越しまでしている…)
裏切られてしまっても、クレアが言っていた「何があってもあなたを愛してる」という言葉を信じたい気持ちがあるのは確かですし「いかなる贋作の中にも必ず本物が潜む」という自分の中の信念のようなものもあるのかもしれない。
絶対に人を信じない人間が、裏切られても信じようとする人間に変わったというのはものすごい変化だと思うので、そういった意味ではハッピーエンドなのかもしれません。
一度でも人を好きになれたことは、大量の絵画に囲まれている暮らしよりも 素晴らしい財産なのではないかと思ったりしました。

長くなりましたが 色んな解釈ができる良い映画だと思います。

※余談
病院でグルグル回すやつ…あれはツラそう…(笑)
頭が混乱してグルグルしてるよ~ってことを表現しているんだろうけど、病んでいる人をグルグル回すのはどうかと…。

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