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映画「私が、生きる肌」感想 -後半にネタバレあり- 変態医師による理解不能な復讐劇。

映画「私が、生きる肌」感想 -後半にネタバレあり- 変態医師による理解不能な復讐劇。
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アマゾンプライムにて鑑賞しました。
アントニオ・バンデラスが演じるロベルは有能な形成外科医。大やけどを負った妻を救うため「人工皮膚」の研究に没頭し始め、禁断の人体実験をしていく…という あらすじ。
なんとなく 面白そうだな~と思って観てみたら、とんでもない変態映画だし 問題や情報量が多くて少し混乱しちゃいました(笑)
究極の変態ってこういうことか…と少し勉強になりました。
前半はロベルに同情する部分も多く 色々と納得できる部分も多いのだけど、後半から色々なことが明らかになり始めると「え、嘘でしょ…」と思わずにはいられないし、すごくゾッとした…。

目が離せない展開なので 飽きることなく観ることが出来ました。
性的な描写も多いので 声を大にしてお勧めはできないけれど、映画が好きな人とかマニアックな作品を好む人にはお勧めできる作品だと思います。
(私はなんだかんだ結構 好きな作品でした・笑)

色々思ったことをつらつら書いてみようと思います。

 

作品詳細

製作年 2011年
製作国 スペイン
上映時間 120分
監督 ペドロ・アルモドバル
原作 ティエリー・ジェンケ
出演者 ロベル・レガル / アントニオ・バンデラス
ベラ・クルス / エレナ・アナヤ
マリリア / マリサ・パレデス
ビセンテ / ジャン・コルネット
セカ / ロベルト・アラモ
ノルマ / ブランカ・スアレス
ビセンテの母親 / スシ・サンチェス、他

簡単解説

ペドロ・アルモドバル監督とアントニオ・バンデラスが「アタメ」(1989)以来22年ぶりにタッグを組み、最愛の妻を亡くし禁断の実験に没頭する形成外科医と、数奇な運命をたどるヒロインの姿を描く問題作。画期的な人工皮膚の開発に執念を燃やす形成外科医ロベルは、かつて非業の死を遂げた最愛の妻を救えるはずだった「完璧な肌」を創造することを夢見ていた。良心の呵責や倫理観も失ったロベルは、ひとりの女性を監禁して実験台にし、人工皮膚を移植して妻そっくりの美女を作り上げていく。
映画.comより

簡単なあらすじ

2012年、トレド。エル・シガラルの大豪邸の一室、指先から足の先まで、全身を肌色のタイツで覆った美しい女性がいた。彼女はその一室から出ることが許されていない。
欲しい物は部屋にあるマイクから要請。それらは食事と共に、小さなエレベーターで送り込まれた。彼女の名前はベラ・クルス。ベラの世話は屋敷の家政婦、マリリアが行っていた。

屋敷の主であるロベル・レガルは、著名な形成外科医だった。彼は完璧な肌を作ることに、執念を燃やしている。
屋敷の地下には最新機器を取り揃えた実験室があり、ロベルは日夜そこで研究を行っていた。自室へ戻ったロベルは、隣室のベラの部屋へ。眠っていると思われた彼女は、本のページで手首を傷つけ気絶していた。すぐさま処置を施し、大事には至らなかった。
紙ですら傷がつく肌はとても柔らかい。ロベルが目指す人工皮膚は、まだ完全ではなかった。
MIHOシネマより

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私が、生きる肌

基本的にネタバレを気にせずに書いているので、未見の方でネタバレしたくない方はご注意ください。

変態医師の ロベル・レガル

映画「私が、生きる肌」感想 -後半にネタバレあり- 変態医師による理解不能な復讐劇。Photo by Jose Haro (C) El Deseo

とても有能な形成外科医ですが、なにやら自宅で禁断の実験をしている。豪邸に手術室があるというのが「ムカデ人間」を生み出したあの医者のようで嫌な予感がします。大やけどを負った妻の皮膚を救うべく「人工皮膚」の研究を始めるも、妻は自分の焼けただれた容姿に絶望し 窓から投身自殺をしてしまう…。

ここまで観ると ロベルが亡き妻を救うために禁断の人体実験をしていくのだろうと予想できるし、ロベルに同情したくもなるんですよね…妻を一途に愛し続けている感じがして。しかし、どんどん変な方向へ…。誰にも止められない感じがしてすごく怖い。
いや、すごく一途なんだとは思う。すごく真面目なんだとは思うけど こういうタイプを怒らせると やはり こうなってしまうのか…と。しかも想像の斜め上をいく感じで全然予想出来ませんでした。
よく こんなこと思いつきますね…驚きです(これは監督に言ってます)。

亡き妻にそっくりな ベラ・クルス

映画「私が、生きる肌」感想 -後半にネタバレあり- 変態医師による理解不能な復讐劇。Photo by Jose Haro (C) El Deseo

亡くなった妻にそっくりなベラという女性。この映画の冒頭から登場しますが、本当に美しい人でした。ロベルによって人工皮膚の実験をされ 監禁されています。皮膚がまだ弱いとのことで常に全身タイツを着ていますが、この実験は本人の意思ではないようで本の切れ端で手首を切り 自殺未遂をしていました。そして 終始 監視カメラで監視されている…。
この時は亡き妻を再現すべく 背格好が似ている女性を誘拐してしまったのか?と思っていましたが。ベラの今後の人生を思うと胸が痛くなります。

ロベルの娘 ノルマ

ノルマは母親が窓から飛び降りるのを目撃してしまい 精神を病んでしまいました。そりゃそうですよね。見た目も火傷によって酷い状態で それだけでも娘からしたらショックな出来事なのに、目の前で死なれてしまって。死人に鞭打つようでアレですけど、正直 娘の前で自殺しなくても…って思っちゃいました。火傷に関しては大変だろうなとも思うけど、そもそもトラ男と駆け落ちした際の事故だったわけで 自業自得な感じもしてしまう。トラ男に無理やりさらわれたということだったら本当に悲劇だと思うけれど。
あのトラ男と不倫関係になるっていうのは普通の感覚ではないと思います(笑) あのトラ男ですよ?あのトラ男に惹かれてしまうって異常じゃないですか?(しつこいw)

とにかく娘のノルマはパーティーで出会ったビセンテに興味を持ってしまい、パーティーを抜け出して ついて行ってしまいます。そして人気のない場所で体の関係を求められてしまいました。
(というか人の気配はありありでしが…沢山いました^^;)
ノルマは精神病院を退院したばかりだったので外の世界が刺激的だったのでしょうね。
そして こんなことに巻きこまれてしまって可哀相でもありました。とにかく発見してくれた父親に強姦されたと思い込み、精神病院へ逆戻り。そして母親と同じように窓から投身自殺してしまいます。
この出来事によってロベルの倫理観も完全に壊れたのだと思います。

レガル家の家政婦 マリリア

マリリアは家政婦でもあり、実はロベルの母親でもありました。そしてトラ男の母親でもあります。ロベルは先代のレガル氏の子供であり、トラ男は使用人との間にできた子供でした。要するにロベルとトラ男は異父兄弟ということになりますね。情報量が多いです(笑)  だから女性の好みが似ているのでしょうか? いずれにしても 育った環境がまるで違ったことにより 二人の性格は正反対となってしまいました。
しかし ロベルの妻と駆け落ちして事故を起こした息子(しかもトラの恰好している)を 簡単に家に招き入れたのは失敗でしたよね…。
どう考えても入れてはいけない人物であることは 過去の悪事と見た目からもハッキリわかるのに(笑)
案の定 拘束されてしまう始末…。ロベルが帰宅してトラ男に銃を向けた際には「殺せ(撃て?)」とか言っちゃってました。
どんな過去があろうと自分の息子だから…と情に流されて 家に招き入れた割には、手のひら返しがすごいです。
一見 唯一のまともな人に見えるのですが、やっぱりヤバい人だなと思ってしまいます。

危険なトラ男 セカ

映画「私が、生きる肌」感想 -後半にネタバレあり- 変態医師による理解不能な復讐劇。Photo by Jose Haro (C) El Deseo

ずっとトラ男と呼んでますが セカという名前です(笑)。マリリアと使用人の間にできた子ということですが、マリリアの話によれば幼い頃から悪に染まり 麻薬の運び屋などをしていたとのこと。幼い頃からってことはマリリアはセカを育ててなかったってことなのかな?もしそうだとすればセカが悪人になってしまったのはマリリアにも多少責任があるとは思う(多少です)。
トラ男は最初に登場した時からヤバい人だってすぐにわかりました。イベントの仮装ってことだけど浮きまくっていますので…。
しかし セカのように 狼の皮を被った狼よりも、ロベルのように羊の皮を被った狼の方が危険だなと思います。わかりやすい方が逃げることができますし。実際にセカはすぐに撃ち殺されてしまいました。
セカがベラを襲うシーンは胸糞悪かった…。このシーンがあるってだけで この映画を勧められる人が限られてしまう気がします。

仕立て屋の息子 ビセンテ

あぁ…。とても不憫なビセンテです…。いや、そもそも悪事を働いてしまったビセンテが悪いというのも事実です。あの出来事がきっかけでノルマは精神を壊し死に至ってしまったのだから。恨まれても仕方のないことをしてしまったと思います。
が!相手が悪すぎました。怒らせてしまった相手がロベルでしたから。でも 自分の娘が同じような目に遭ったら 誰だって復讐しようと思うはずで 一生許すことはないと思います。
そして ビセンテの罪とロベルの罪を天秤に架けて どっちの方が悪いか… と考えることが本当に不毛なことだな、と。
どちらも悪い。どちらも他人の人生を奪ってしまったので。

しかし、ベラの正体がビセンテだと明かされた時は 本当にビックリしたし、さらに中の人がビセンテであると知った上で 体の関係を持つって一体どういう心境なんだろう…。いくら妻に似せたとはいえ。しかも娘を強姦した相手でもあるのに。愛し始めているのが本気で意味がわからず、ちょっとプチパニック状態になりました。さすがに変態すぎるでしょう…^^;

ベラ(ビセンテ)の思惑…

映画「私が、生きる肌」感想 -後半にネタバレあり- 変態医師による理解不能な復讐劇。Photo by Jose Haro (C) El Deseo

映画の前半でベラ(ビセンテ)はロベルを誘惑し拒まれています。熱い眼差しを向けられていることに気付いたベラは この頃からロベルを信用させて脱出する機会を狙っていたということですね。完璧に見えたロベルも最愛の妻には弱かったようで「もう逃げない。ロベルとずっと一緒に居る」という約束を信用してしまう。
(散々ひどい扱いをしてきた相手となんて 一緒にいたいと思うわけがないのに…)
あっけなく銃殺されてしまって ちょっと拍子抜けでした。
完璧な外見を作り上げることはできても、中身までは自分の思い通りにはいかないということですね。
自分が創り上げて 支配した(と思い込んでいる)相手から逆襲されるのは、映画の中ではよくある設定なので 結末は何となく読めてしまいますが見応えはあったと思います。

まとめ

映画「私が、生きる肌」感想 -後半にネタバレあり- 変態医師による理解不能な復讐劇。Photo by Jose Haro (C) El Deseo

最初から人工皮膚を完成させるために誘拐し、人体実験させられている女性が何かしらの動きをするのだろうと思っていたのですが、まさかその相手が娘を乱暴した相手(男性)というのが本当に気味が悪いなぁと。
映画全体を見るとものすごくお洒落でスタイリッシュなのに…。カラフルな洋服や 壁にびっしりと書かれた文字など、細部までこだわっているように感じました。
ビリビリに破いた洋服を掃除機で一気に吸い取ってるのは気持ちが良かったです。(掃除機が壁に直接設置されてましたね^^;)

ラストではビセンテが母親の店に戻り、自分がビセンテであることを告げます。
監禁されていたこと、性転換手術されてしまったこと。呆然とする母親…。という結末でした。
生き残っている人間はこれからも人生が続いていく。これはこれで結構ツライ現実だなぁと思ったりします。

中身は男性のまま(恋愛対象として見ているのは女性)なのに、見た目は美しい女性。
今後も恋愛対象にも性的対象にもならない男性からアプローチされたり、トラ男みたいな人間とも出会ってしまうかもしれない。
犯した罪と天秤に架けるのは無意味だとは思うけど、さすがに代償が大きい。

好みが分かれると思いますが、見応えのある作品でした。

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