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韓国映画「オアシス」感想 -後半にネタバレあり- 社会に馴染めない青年と 脳性麻痺の女性の純愛を描いた作品。妄想の世界がとても美しくて泣けた

韓国映画「オアシス」感想 -後半にネタバレあり- 社会に馴染めない青年と 脳性麻痺の女性の純愛を描いた作品。妄想の世界がとても美しくて泣けた

こんにちは オリカ(@orika_note)です。
今回はアマプラでおすすめにあった「オアシス」の感想を書いてみようと思います。

結論から言うと、とても好きな作品でした。
とんでもないものを観せられたというか、突きつけられたというか。
あまりにも衝撃的すぎて、観終わった後もしばらく色々と考えてしまうような、一体何が正しいのか自問自答してしまうような…幸せと悲しみがゴチャゴチャになっている作品だったと思います。
とにかく言葉では言い現せないような胸の苦しみを感じる…。
悲しい…ツライ…。

大雑把に言ってしまうと、社会不適合者であるジョンドゥと脳性麻痺の女性コンジュの恋愛を描いた映画なのだけど、2人の前には越えられそうにない高い高い壁がある。
恋愛映画には何かしらのハードルがあるのはお決まりのルールではあるけど、この映画においてはそのハードルがあまりにも過酷だし、本人達だけの問題ではなくて モラル的にもとても難しい状況になっていて、じゃあどうすれば報われるのか…考えても考えても答が出ず、ただただ悶々とする作品でした。

以下、簡単な作品紹介の後にネタバレ感想を書いてみようと思います。




作品詳細

製作年2002年
製作国韓国
上映時間133分
監督・脚本イ・チャンドン
出演者ホン・ジョンドゥ / ソル・ギョング
ハン・コンジュ / ムン・ソリ
ホン・ジョンイル / アン・ネサン
ホン・ジョンセ / リュ・スンファン
ハン・サンシク(コンジュの兄) / ソン・ビョンホ
ジョンイルの妻 / チュ・グィジョン
サンシクの妻 / ユン・ガヒョン
隣家の女性 / パク・ミョンシン、他

簡単解説

「ペパーミント・キャンディー」のイ・チャンドン監督が、社会に適応できない青年と脳性麻痺の女性の愛の行方を描き、第59回ベネチア国際映画祭で監督賞などを受賞した恋愛ドラマ。ひき逃げ死亡事故で服役し刑務所から出たばかりの青年ジョンドゥは、家族の元へ戻るが迷惑がられてしまう。ある日、被害者家族のアパートを訪れた彼は、寂しげな部屋にひとり取り残された被害者の娘コンジュと出会う。重度の脳性麻痺を持つ彼女は、部屋の中で空想の世界に生きていた。互いに惹かれ合い、純粋な愛を育んでいくジョンドゥとコンジュだったが……。「ペパーミント・キャンディー」でも共演したソル・ギョングとムン・ソリがジョンドゥとコンジュをそれぞれ演じた。2019年3月、イ・チャンドン監督の「バーニング 劇場版」公開にあわせて、HDデジタルリマスター版が日本初公開。
映画.comより

簡単なあらすじ

29歳の青年ホン・ジョンドゥは、ひき逃げによる過失致死で2年6か月の刑期を終えて出所した。入所したときの半袖シャツのまま、母の服を買って実家に帰ろうとしたが、家族は引越しをしてしまい、居場所も分からなかった。飲食店で無銭飲食をして警察に捕まった彼の元へ、ようやく弟のジョンセが迎えに来て、ジョンセの運転する車で新しい家へと向かい、家族と再会する。しかし、社会不適応者である彼に対し、家族は暖かい対応をしない―
Wikipediaより

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オアシス

基本的にネタバレを気にせずに書いているので、未見の方でネタバレしたくない方はご注意ください。

悪い人間ではないけど 迷惑をかけまくるホン・ジョンドゥ

韓国映画「オアシス」感想 -後半にネタバレあり- 社会に馴染めない青年と 脳性麻痺の女性の純愛を描いた作品。妄想の世界がとても美しくて泣けた(C)2002 Cineclick Asia All Rights Reserved.

ひき逃げによる過失致死で2年6か月の刑期を終えて出所するも 誰も彼を迎えに来ない。
それどころか普段からトラブルをおこしては家族を困らせているため 邪魔者のような扱いを受けている。
確かに こんな人が家族にいたら正直 たまったものではないだろう。ジョンドゥの弟が無銭飲食したジョンドゥを迎えに行ったとき、車の中で「俺の人生の邪魔をするな」というようなことを言っていたが、確かに本人だけでなく 家族の人生すらも脅かすような存在であると思う。
最初に登場したシーンを見た時から感じたことは ジョンドゥは何らかの障碍があるものの、身の回りのことはできるし日常生活では困ることがないので 医療や福祉には繋がらないまま 野放しになっている人なのだろうなぁと思った。
ググると沢山でてきますが、彼のような軽度の知的障碍者が何度も罪を犯してしまい 家族にも見放され、刑務所しか居場所がないケースは日本でも沢山あって問題となっているようですね。自分の生活だけでも大変な人が多いと思うので 家族が面倒を見続けていくのは限界があるのだろうなぁと思います。難しい…
https://www.dailyshincho.jp/article/2018/07200700/?all=1

赤の他人から見れば ジョンドゥはある意味 純粋で悪い人間ではないし、29歳なのに子供のように無邪気だし優しい。どんなに邪魔者扱いされていても家族が好きなようだし、刑務所から出所した時も、母親の洋服をプレゼントとして買ったりしている(そのせいでお金がなくなってしまって無銭飲食しちゃいますが…)。
ということで、彼はとても悪い人間には見えず むしろ良い人間にも見えますね。
赤の他人であれば。
しかし、世の中綺麗ごとだけでは通用しません…。彼と関わった人はもれなく大変な目に遭わされていますし、現に過去に犯罪を犯しているので被害者もいるわけです…。
無銭飲食されたお店も大迷惑であり、家族もいつも尻拭いさせられて大迷惑…
悲しい現実だけれど、彼が好きなように生きてしまうと 誰かが被害者になってしまう。
でもジョンドゥ自身は 自分のせいでいつも皆が怒っていることは理解できても、それを治す能力はないので、きっとジョンドゥ自身もめちゃくちゃ辛いんだろうなぁと思う。
不器用にいつもヘラヘラ笑っているけど 人に近づけば避けられてしまう生き方しかできないのは 見ていて不憫だった。
私はたまたま足が健康ではないけれど、もしかしたらジョンドゥと同じ立場だったかもしれない。そう思うとジョンドゥだって出来れば兄のように もしくは弟のように、トラブルを起こさず いわゆる一般的な生き方がしたかったんだろうなぁと思ってしまって悲しくなった。
コンジュになんの仕事をしているのか聞かれた時に (兄の仕事である)車の整備士をしていると嘘をついていたので、兄の仕事は人に伝えても認めてもらえる仕事だと認識していたのかなぁと感じたし、同時に自分のことを正直に伝えると認めてもらえないかも…とか 嫌われるかも…ということも一応認識はしているのか…と思うとやはり辛くなる。いっそ何も理解できない方が楽だろうなぁと思う。

脳性麻痺のハン・コンジュ

韓国映画「オアシス」感想 -後半にネタバレあり- 社会に馴染めない青年と 脳性麻痺の女性の純愛を描いた作品。妄想の世界がとても美しくて泣けた(C)2002 Cineclick Asia All Rights Reserved.

ひき逃げ事故の被害者の娘で脳性麻痺の女性。登場シーンのインパクトが衝撃的すぎた。え?本当に障害のある人が出演しているのかな?と思ってしまうほどの演技だった。
演技というより憑依しているような感じ。コンジュを演じているムン・ソリはこの映画の演技でシアトル国際映画祭「Golden Space Needle Award」を受賞しているそうです。
実際に脳性麻痺の女性と約半年間行動を共にして役作りしたそうで、撮影後は腰や首の痛みで治療が必要だったとのこと。コンジュという女性を見事に演じきって素晴らしいの一言に尽きる。
脳性麻痺について 私はあまり詳しくないのですが、どうやら体は不自由であるものの 思考力や理解力などは健常者とほぼ変わらないようですね。
だとすると、他人が自分をどういう目で見ているか ということや、自分の置かれている状況も理解できている訳で これはこれで苦しい現実です。
父親を事故で亡くし 兄夫婦は自分を置いて新居へ引っ越してしまう。
それも障碍者向けの住居でありコンジュの名義であるにも関わらず置いていってしまう。普段の簡単なお手伝いは隣人にお金を渡して任せているようです(色々ひどい)。
たまに行政の審査がある時だけ新居に連れて行かれ 同居していることを装い、審査が終われば早々に元の古い家に戻され また置いていかれる
そんな状況もコンジュ自身が理解していたと思うと本当に苦しい。
唯一の楽しみは空想することとラジオを聴くこと。コンジュが見ている世界は本当に美しくて 鏡で照らした光が蝶々になってヒラヒラと飛び始めた時に なぜか涙が出そうになってしまった。コンジュの繊細で美しい感性というか 汚いものよりも綺麗なものを見ようとする純真さとか コンジュが美しい女性だということがよくわかるシーンだと思う。

そして たまに現れる 空想の中のもう一人のコンジュがとても幸せそうで。
健常者のカップルのようにキャッキャしたり 駅のホームで歌を歌ったりするシーンは泣いてしまう…幸せそうなのに 現実とのギャップがツラいですね…。
ダンサー・イン・ザ・ダーク を観た時も思ったのだけど、人はどんな過酷な状況下でも頭の中では自由を手にすることができる。ツラすぎる現実を生き抜くために備わった防衛本能のようなものですが 空想に逃げなくてはいけない状況というはやはり苦しいですね。

突きつけられた 私の中の差別意識

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ジョンドゥとコンジュの恋愛については、素直に応援したいと思うし 2人が幸せになれるといいなぁと思うんですけど それは映画(フィクション)だからそう思えるのですよね。
赤の他人だし 映画だから無責任に応援できる。
でも現実は ジョンドゥとコンジュが裸でいるところを目撃してしまったら コンジュが暴行されていると思ってしまうし、私でも絶対に通報すると思う。
ジョンドゥは性犯罪の前科があるし 何しろ風貌や仕草や話し方、雰囲気で怪しい人間だと認識してしまうと思う。そして、コンジュのように脳性麻痺の女性が体の関係を求めるとも想像できないだろう。私の中にも 表面でしか人を判断しない差別意識があるなぁと思ってしまった。
コンジュの家族は コンジュを古い家に置いていくし酷いなぁって思うんですけど、ひき逃げの被害に遭った遺族でもあり、脳性麻痺のコンジュとの暮らしは 子供時代から沢山悩んだりもしただろうし、ものすごく大変だったはず。妊娠している妻もいてお金と心の余裕がなくなってしまったのだろうなぁと思う。
(脳性麻痺の家族を1人にして放っておく…ってのは基本的にダメだとは思いますが)
ジョンドゥの家族にしても 彼の尻拭いばかりする人生になってしまっていて辛いだろうなぁと思う。家も古い家に引っ越したりしていたので 恐らく金銭的にも被害が大きいのでしょうね。なので、家族のことも一方的に責められない。
映画の中だけの話であれば 家族がもっと2人を応援してあげたらいいのに、もっと優しくしてあげればいいのにって思うんですけど、現実はそんな単純じゃないし 難しい問題だなぁって思います。

ただ、これは現実でも絶対に同情できないし 明らかに酷い差別だなって思うシーンもあった。
例えばコンジュの家で 隣人夫婦がやらしいことをしようとしている時にコンジュが見ているにも関わらず 「(見られても どうせ何もできないから)別にいいでしょ」という態度をとったこと。
コンジュを人間として尊重していれば そんな言動はもちろんしないだろうし、それ以前に人の家で何してんだって話…。
ジョンドゥを逮捕した警察も、ジョンドゥに対して
「お前、変態だろ」
と言ったり「あんな娘に対して欲情するなんて…」という発言があった。
もちろん、脳性麻痺の女性に対して乱暴している点で あまりにも酷いっていう意味もあるのだろうけど「よく性的な目で見れるよなw」という蔑んだ意味も含まれていて、さすがにこの時は“この2人の関係を何も知らないくせに😤”って気持ちになった。
私の中にも差別的な部分があると受け入れつつも、やっぱりあまりにも酷い差別発言に対しては許せない気持ちになる。

本当は暴行されてないし ちゃんと付き合っていると伝えたくてもうまく伝えられなくて警察署で苦しみ悶えているコンジュが 本当にツラそうで胸がえぐられました。
悲劇すぎて私もコンジュと一緒に暴れたくなってしまった(→感情移入しすぎ)。

まとめ

韓国映画「オアシス」感想 -後半にネタバレあり- 社会に馴染めない青年と 脳性麻痺の女性の純愛を描いた作品。妄想の世界がとても美しくて泣けた(C)2002 Cineclick Asia All Rights Reserved.

なんか色々とつらい現実を見せつけられて、悲しい気持ちになることばかり書いてしまったのだけど、ジョンドゥとコンジュだけを中心に考えれば 純粋な恋愛映画です
表面的なことや 損得勘定なしに 本能的にお互いが惹かれ合って 一緒にいると楽しくて幸せなのだろうなぁと思う。
ジョンドゥが最初にコンジュの家に忍び込んで足を触りだした時は、
いや、チョット待って…さすがにそれだけはやめてくれ…モラル的にNG過ぎて見るに耐えないからやめてくれ…って思ったし、実際に襲ってしまった時はあまりに衝撃的すぎて 直視できなかった。
ジョンドゥに対しては コイツはもう駄目だ…っていう目でしばらく見ていたのだけど、あまりのショックで失神してしまったコンジュを見て、ジョンドゥなりにやってはいけないことの線引きを学んだのだろうなぁと思う。
(その後のジョンドゥはコンジュに優しかったし、酷いことは一切していないので)

人から酷い扱いしか受けておらず 恐らく障碍もあったであろうジョンドゥからすると、人への扱いというか 人に優しくすることも そもそも理解できていなかったのではないか?と思う。最初は興味本位だったし強引に手に入れたいと思ってしまったけれど、ちゃんと会話をしてくれるコンジュが本当に大切な存在になっていって“優しくすること”ができるようになったのかも?
コンジュにしても 周りの人がきちんと目を見て話してくれた回数は少ないと思うので、あんなに酷いことをされたのに 目を見て楽しそうに話してくれたことや、女性として可愛いと言ってくれたことは とても大きな出来事だったのだろうなぁと思う。
健常者であれ 障碍者であれ 恋愛のプロセスは同じようなものですね。
(普通は暴行されたら通報案件なので 絶対に恋愛には発展しませんが…)

そして、オアシスの絵からゾウが出てきて 小さい部屋で踊ったあとのキスシーンがとても良くて 今でも思い出すと少しウルウルしてしまう。
幸せは すごく遠くにも近くにもあるように感じたし チープな紙吹雪が 美しい花吹雪にも見えて、もう本人が幸せならそれでいい。それが全てだなぁって改めて思う。

木の枝を切り落とすシーンも、他人から見ればジョンドゥの異常行動にしか見えない。
でもコンジュからしたら ずっと怖かった影を消してくれているわけです。
ジョンドゥも自分がしばらく刑務所に入ることは理解しているので 影が消える魔法が使えない。自分がいない間 コンジュが怖がらないように影ができないように枝を切っている。
言葉はなくても コンジュにはちゃんと愛が伝わっているだろうなぁと思えるシーンでした。
(ただの異常者にしか見えないのが 本当にツライ…)

ロミオとジュリエットのような悲劇的なラストになるのだと思っていたのだけど、希望が持てるラストだったのも良かった。
ホコリがキラキラしている中で コンジュが部屋の掃除をしているだけなんだけど、ジョンドゥからの手紙を読んだ後の行動だと推察すると、いつかまたジョンドゥが部屋を訪ねてくる日を信じて 部屋を綺麗にしておこうという前向きな気持が伝わってきますし、その日を楽しみにしている雰囲気すらあって。
強い女性だなぁと思うし 本当に幸せになってほしい。

余談ですが、ジョンドゥの母親の誕生日会でのジョンドゥの鈴鳥の話、内容は全く思い出せないけど ジョンドゥが誰からも相手にされていないことがよくわかるシーンで、あとからボディブローのように効いてきますね…。
ジョンドゥが大笑いして周りを笑わそう(楽しくさせよう)とすればするほど引いていく感じがリアル…。あの時はさすがのコンジュも引いていたどころか怒ってたので 痛々しかった…。
ジョンドゥにも幸せになってほしい。そしてもう犯罪を犯さないように頑張ってほしい。

一度観た後で冒頭のシーンを見ると、なぜか泣けてくるので不思議です。
オアシスの絵と木の影が映っているだけなんですけどね…
ということで 韓国映画のすごさを実感した作品でした。
多分、また観ると思います。

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同一人物とは思えない演技力なので是非✨

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