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映画「はじまりへの旅」ネタバレ感想

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出典元:映画.comより

第一印象はとんでもない家族だなって感じだったのだけど、観ていくうちに彼らの生き方を少し羨ましくなったりしました。自分が置かれている状況が普通だと思って生きているけど、私は世の中のこと、何も知らないなぁと打ちのめされた^^;
もしかしたら「普通」にこだわらなくても、案外幸せに生きれるんじゃないかなって思わせてくれます。
社会との接触を断ち切り、独自の生き方をしている一家の話。

作品詳細

製作年 2016年
製作国 アメリカ
上映時間 119分
監督・脚本 マット・ロス
出演者 ベン・キャッシュ/ヴィゴ・モーテンセン
ボゥドヴァン“ボゥ”キャッシュ/ジョージ・マッケイ
ヴェスパー・キャッシュ/アナリース・バッソ
ザジャ・キャッシュ/シュリー・クルックス
ナイ・キャッシュ/チャーリー・ショットウェル
ハーパー/キャスリン・ハーン
レスリー・アビゲイル・キャッシュ/トリン・ミラー
デイブ/スティーヴ・ザーン
ジャスティン/イライジャ・スティーブンソン
ジャクソン/テディ・ヴァン・イー、他

簡単なあらすじ

普通ってなんですか?ベン・キャッシュ(ヴィゴ・モーテンセン)と6人の子供たちは、現代社会に触れることなくアメリカ北西部の森深くに暮らしていた。父仕込みの訓練と教育で子供たちの体力はアスリート並み。みな6ヶ国語を操り、18歳の長男は名立たる大学すべてに合格。しかしある日入院していた母・レスリーが亡くなり、一家は葬儀のため、そして母の最後のある“願い”を叶えるため旅に出る。葬儀の行われるニューメキシコまでは2400キロ。チョムスキー※は知っていても、コーラもホットドッグも知らない世間知らずの彼らは果たして、母の願いを叶えることが出来るのか…? (※ノーム・チョムスキー=アメリカの哲学者、言語哲学者、言語学者、社会哲学者、論理学者。)
filmarksより

基本的にネタバレを気にせずに書いているので、未見の方でネタバレしたくない方はご注意ください。

社会と断絶した暮らしをする一家


出典元:映画.comより

冒頭から狩りをしていますね。普段スーパーに並んでいるお肉しか食べてない私からすると このシーンはなかなかグロテスクではありますが、必要な分だけをその都度狩り 感謝して食べるというのは良いことだと思う。色んな添加物が入った食べ物は食べず、日々過酷な訓練をしているので子供達の体力面はアスリート並。しかも毎日のように難しい本を読んでいるので、知識量がハンパなく、6ヶ国語を操れるのだからスゴイ…^^; 学校に行かなくてもこんなに出来るものなのだろうか。また性に関しても質問されれば躊躇なく答えているのもスゴイなって思った。小さい子にはまだ早いのでは…?と思いきや、子供が興味持った時点できちんと教えるというのが徹底されている。

母親の死について


出典元:映画.comより

母親は病気によって自殺しています。子供の前でも変にごまかしたりせずに、双極性障害(精神病)によって手首を切り自殺したと伝えますが、伯母の子供もその場に居たことから気まずい空気に…。そりゃそうだ…。そしてベンの極端な思想を嫌い言い争いに…。そりゃそうだ…。
子供達の祖父であるジャックはベンの思想を嫌い、娘が死んだのもベンのせいだと思っている。
そして亡くなってしまった母親の遺言書にはキリスト式の土葬では無く、火葬して欲しいと書いてあります。そして燃やした後は 灰をトイレに流せと(これはちょっと抵抗ありますね…)。しかし、祖父は一般的なキリスト式の土葬をして見送ろうとしていたことから ベンと対立。お葬式にも来るな!と。確かにここまで仲がこじれてしまったらそう言ってしまうのも仕方ない…。

子供達はどう思っているのか


出典元:映画.comより

長男であるボウは一流大学に軒並合格するほどの秀才で運動神経も抜群(ただ女の子と話すのは苦手)。ベンの思想が行き過ぎていることも分かっているが、ベンが悪意によってそれをやっている訳ではないことも理解している。終盤で本当は大学に行きたいという事を伝えているので やはりベンの思想を全て受け入れている訳ではない。特に次男のレリアンは冒頭からベンの思想に対して反抗している。他の子供達に関してはベンの思想が間違っているとは思っていない様子だった。実に素直というか…。特に下の子達に関しては父親の言うことを疑う概念がまだ育っていないのもありますが。しかし…ナイフを貰って喜んでる子供初めて見たかも…一般人の私からすると「大丈夫なのか?」って思っちゃいます^^;

父親の教育方針について疑問もある


出典元:映画.comより

ここまでの流れだと、父親の考え方や教育方針は非の打ち所がないように感じます。子供達は肉体面でも知能面でも優秀だし、自分の気持ちをちゃんと具体的に伝える能力もある。そういう面では父親スゴイなぁって素直に思う。学校に行っていない子供達のために 父親でありながら先生の役目もちゃんと果たせていると思う。学校に行くことが当たり前だと思っていたけど ちゃんと勉強できてるなら学校に行かなくても問題ないじゃんって思ってました。あのシーンを観るまでは…。

と言うのは、アメリカの哲学者ノーム・チョムスキーの誕生祝いだということで一家がパーティーするシーンがありますが、ケーキや食べ物をスーパーで万引きして調達するんですよね…これは頂けない。誰を信じようと祝おうと個人の自由だけど、万引きは犯罪だしお店側の損失を考えるとこれはダメでしょうって普通に思う。これを父親主導でやっていてちょっと驚いてしまった…。あんなに完璧な思想を持っているのに、なぜ犯罪を犯すことを良しとしたのか。ちょっと謎ですね…。そもそもファーストフード店の様な場所でご飯を食べようとしていたが コーラやホットドッグなど体に悪い食べ物しかなく「食べられるものがない」ってことで店を出たはずなのだけど。そのあとスーパーで万引し、チョコケーキ?などを食べていました。チョコケーキは毒物として認定されてないのねって矛盾を少し感じてしまう。(あのスプレー缶みたいなやつから生クリームがブシューって出てくるやつ、めっちゃ体に悪そうなのに…^^;)

祖父について


出典元:映画.comより

お葬式に派手なファッションで突撃し 妻の遺言を読み上げ持論を展開するベンでしたが、案の定 外に追い出されてしまいます(警察に通報されなかっただけでも良かったですね)。そして普段からベンの思想が嫌いだったレリアンが祖父の家で暮らすと言って家出をします。
子供達の祖父(ジャック)は 子供達の将来のためにベンと子供は離れて暮らす方が良いと確信します。
ここでベンとジャックが激しく口論するシーンを見て、それまでは映画の主人公でもあるベンの視点で観ていたこともあり、ジャックのことは頑固者で嫌な人というイメージがあったのだけど、ベンの言い分よりもジャックの言っていることの方が断然正しいということに気付きます。
万引きしたこと、手を骨折するほどの過酷な訓練、そして怪我を放置したこと、学校に行かせないこと、なにより子供達には自分の人生を選択する権利があり 父親が子供の未来を奪ってはいけない、と。(めちゃくちゃジャックの言い分の方が正しい…)
激しく反撃しているベンと違い、ジャックは落ち着き余裕もある。口論の場合 冷静で落ち着いている人の言っていることの方が正しく聞こえてくるので不思議…。
しかしベンは自分の思想が正しいと信じて疑いません。レリアンを取り戻すため家によじ登って侵入し 取り返そうとします。その役目を運動神経抜群のヴェスターにやらせるのだけど、まず 家に侵入させるとかも間違っているし、そもそもレリアンの意思で祖父の家にいる訳で、取り返すみたいな感じも何か違うんだよなぁって思っちゃいました。
断崖絶壁でもよじ登れる身体能力を持っているヴェスターですが、屋根の瓦が壊れてしまい落下。危なく命を落とすかもしれない事故でした。さらにボウが実は大学へ行きたがっていたこと、その準備を母親が手伝っていたこと、母親は本当は森を出たがっていたこと、色んなことが浮き彫りとなって ベンも自分が間違っていることにやっと気付きました

まとめ


出典元:映画.comより

この映画を観て「普通とは何か」を自分なりに考えてみましたが、普通ってそもそも無いのではないかと思います。誰もがオリジナルの人生を歩いている。人を幸せにしたり自分が幸せになるために生まれてくるものだと思う。父親のベンは純粋に子供達を愛し、良かれと思って色々な思想を教え込み 勉強させ、生き抜く強さを身につけるために日々訓練をしていた。子供達もそれできっと幸せだったと思うけど、少しずつエスカレートしてしまったのかな、と思う。
相手のことをどんなに想っていても 自分の価値観を押し付けてしまうと 相手の「個」を無視することになるので良くない

映画中に「ロリータ」について触れていたけど、ロリータの本を読んだ娘(キーラー)に感想を具体的に答えなさい というシーンがある。そこでキーラーは「主人公の男性の目線で書かれているので感情移入してしまうが、実際には少女をレイプしているし良くないこと。それでも主人公の愛は純粋なのでモヤモヤする」のようなことを答えている。

このロリータに登場する男と同じように、ベンは子供達を純粋に愛しているし 良かれと思って色々としてあげているのだけど、実際には犯罪や危険に巻き込み、支配し、将来を奪ってしまっているんですよね。どんなに愛していてもやっても良いことと悪いことの線引きは ちゃんとしなくてはいけない、と思う。
でもこの映画の救いはあんなに頑固だったベンが自分の過ちに気付いたこと だと思う。
子供達に謝罪し、間違っていたと認めた。これは意外と出来ないことだと思うのでやっぱりベンはすごいなって思う。
社会と断絶するのではなく、自分たちの思想も大事にしつつ 社会を受け入れて暮らしているラストは良かった。やはり何事もバランスが大事だなと改めて思う。
大学へボウを送り出す時に、色々と忠告したあと 最後に「死ぬな」って言ってましたが、これに尽きるんじゃないかなぁって思います。父親は結局 とにかく子供達は死なずに生き抜いて欲しいっていう願いがあって、それが行き過ぎてしまったのかな、と。

まとめと言いつつ長くなってしまいましたが 観て良かったと思える映画でした!

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