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映画「彼女がその名を知らない鳥たち」感想 -後半にネタバレあり- 意外な結末だけど 、きっと…これで良かったんだ…と思わないとツライ。

映画「彼女がその名を知らない鳥たち」感想 -後半にネタバレあり- 意外な結末だけど 、きっと…これで良かったんだ…と思わないとツライ。
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評判が良かったのでそのうち観てみよう~と思っていたまま放置されていた作品でしたが、やっと観ました。
どうしてもっと早く観なかったんだろうって思うほど 良かったです。
恋愛とエロスとミステリーが組み合わさったようなストーリーでしたが、ラストまであっという間だった。
それだけ中弛みせず集中して観れたということだと思います。

愛の形は色々あるとはいえ、こんなのありなのか?と思わずにはいられないし、観終わった後 ものすごく胸が苦しくなった。
そして 蒼井優と阿部サダヲをはじめとした俳優陣の演技もすごかったです。
ベッドシーンに関しては 当然ながら映画の世界の出来事として観ているわけだけど、妙に生々しくて 本当にすごいな~としか言い様がなかった(語彙力がなくて申し訳ないです^^;)
蒼井優はこの映画で日本アカデミー最優秀主演女優賞を受賞していますが ものすごく納得してしまった。

まだ頭を整理できてませんが 後半でネタバレありの感想などを書いてみようと思います。。

 

作品詳細

製作年 2017年
製作国 日本
上映時間 123分
監督 白石和彌
原作 沼田まほかる
出演者 北原十和子 / 蒼井優
佐野陣治 / 阿部サダヲ
水島真 / 松坂桃李
黒崎俊一 / 竹野内豊、他

簡単解説

沼田まほかるの人気ミステリー小説を蒼井優、阿部サダヲ主演、「凶悪」「日本で一番悪い奴ら」の白石和彌監督で映画化。下品で貧相、金も地位もない15歳上の男・陣治と暮らす十和子は、8年前に別れた黒崎のことを忘れられずにいた。陣治に激しい嫌悪の念を抱きながらも、陣治の稼ぎのみで働きもせずに毎日を送っていた十和子は、黒崎に似た面影を持つ妻子ある水島と関係を持つ。ある日、十和子は家に訪ねてきた刑事から、黒崎が行方不明であることを告げられる。「十和子が幸せならそれでいい」と、日に何度も十和子に電話をかけ、さらには彼女を尾行するなど、異様なまでの執着を見せる陣治。黒崎の失踪に陣治が関係しているのではないかとの疑いを持った十和子は、その危険が水島にまでおよぶのではとないかと戦慄する。
映画.comより

簡単なあらすじ

十和子は陣治と付き合って長い。二人は同棲する仲だが、十和子の陣治への気持ちは、すでにすっかり無くなっていた。顔を合わせても会話も少なく、部屋も別々。うだつの上がらない陣治を、嫌悪する日々が続いていた。しかし、陣治は違った。十和子を幸せにできるのは自分しかいないと、献身的に十和子に尽くしていた。料理を作り、金を渡し、いつでも笑顔でいる。十和子は陣治に食べさせてもらっている生活を送りながらも、現状に不満を募らせるばかりだった。
MIHOシネマより

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彼女がその名を知らない鳥たち

基本的にネタバレを気にせずに書いているので、未見の方でネタバレしたくない方はご注意ください。

どうしようもない日々を送る
北原十和子

映画「彼女がその名を知らない鳥たち」感想 -後半にネタバレあり- 意外な結末だけど 、きっと…これで良かったんだ…と思わないとツライ。(C)2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会

不潔で野卑な陣治と暮らしながら、百貨店やDVDショップの店員にクレームを入れることでストレスを発散している。
家事は一切やらず、毎日 陣治が置いていくお金(2000円くらい?)で時間をつぶしていた。本当にね…毎日なにしてるの?ってくらい何もしない女性です(笑)。全く共感できないだけでなく、色々尽くしてくれる陣治に対して悪態をつき 暴言を吐き、挙句 クレームを入れたデパートの社員(水島)と不倫関係になっていて、嫌悪感すら湧いてしまった…。なんなんだこの人は…。
陣治と一緒に暮らして居ながら 8年前に別れた元恋人とのDVDを観ながら想い出に浸る十和子。
本来であれば興味を無くしてしまいそうになるけれど、それでも目が離せなくなってしまうのは 十和子という女性がとても脆くて心配になってしまうからかもしれない。十和子を見ていると 腹正しさから 少しずつ「悲しい」という気持ちになってしまった
彼女は精神的に未熟な女性であるけれど 心底悪い人間という訳でもなくて 不思議な魅力があるなぁと思う。

不快度指数100%
佐野陣治

映画「彼女がその名を知らない鳥たち」感想 -後半にネタバレあり- 意外な結末だけど 、きっと…これで良かったんだ…と思わないとツライ。(C)2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会

十和子の15才年上の恋人(同居人)。最初は、うわ…って感想しかなかったです(笑)。ご飯を食べているシーンは本当に不快だった。クッチャクッチャ音を立て、ボロボロこぼす、それを拾う(汚くても食べる)、汚れた手を汚れた靴下で拭き、食事中にグェグェ言いながら差し歯をテーブルに置く(というか差し歯って自由に取り外しできるの?取れちゃってるなら歯医者に行こうよ…)。見た目もなかなかの不潔っぷりで、仕事とはいえ なんで毎日そんなに汚れているのか謎だった(朝起きたばかりなのになぜか汚れている…ように見える…なぜだろう…)。仕事の愚痴ばかり言って 口ばかりの夢を語ったりして、十和子の目から見たらさぞかし嫌な存在だったでしょう。でも 十和子も人のこと言えないくらい酷いのでね…

観ていくうちに、そんなに嫌いならなんで別れないの?毎日2000円貰えるから??
それだけの理由で我慢して一緒に居るのが不思議で仕方なかった。
(のちに色々と判明して 驚くことになるけど…)

十和子に対して異常なまでに執着し、尾行したり 束縛する陣治は どう考えても危険人物に見える。十和子に対しては下僕と言っても過言ではないくらいに尽くすのだけれど、十和子の周囲にいる男に対しては ものすごい冷酷で攻撃的な一面もある。
電車でたまたま居合わせた男を突き飛ばしたり、不倫関係にある水島の家を突き止めて嫌がらせをしたり。
何も考えずに観ていると、これは陣治が黒崎を殺害してしまったのだろうな…それを十和子に隠しているのか…と思ってしまう。
いつ、どんな風に十和子に気付かれてしまうのか…とドキドキしながら観ることになります。(違うんですけどね…すっかり騙されました)

十和子が想い続ける元恋人
黒崎俊一(暴力男)

映画「彼女がその名を知らない鳥たち」感想 -後半にネタバレあり- 意外な結末だけど 、きっと…これで良かったんだ…と思わないとツライ。(C)2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会

クズな暴力男ですが、十和子が忘れることができない元恋人です。竹野内豊ってこんなクズな役も出来るんですね…ビックリ。
仕事が出来る風の男を演じながら 実際は十和子に金の無心をしたり、実力者である国枝に十和子の身体を差し出していた。挙句の果てには国枝の姪と政略結婚し一方的に十和子と別れる。(別れたくないと泣く十和子をボコボコに殴って大怪我を負わせ 道端に捨てるという鬼畜っぷりでした)。正直、刺されても仕方ないよね…って思ってしまった…。

中身がスッカスカの不倫男
水島真

映画「彼女がその名を知らない鳥たち」感想 -後半にネタバレあり- 意外な結末だけど 、きっと…これで良かったんだ…と思わないとツライ。(C)2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会

十和子がクレームを入れたデパートの社員。一見真面目そうで誠実に見えるけど 中身はスッカスカであった。
お詫びに部屋まで来るというのも驚くけど「もう帰ってください!」と泣く十和子になぜかキスをする展開…。
正直「えー!」って思ってしまった。まぁ…そんな始まり方も水島と十和子だから成立するのでしょうね。普通だったらありえないので。
ホテルで事が終わった後に「僕たちはお互い孤独なもの同士」とか「タクラマカンの砂漠」「永遠の死」とかを それらしく十和子に語っていたけど、全然セリフが頭に入ってこなくて違和感しかなかった。
のちに本屋に並べられた本の文章をそれらしく適当に言っていたことが判明した時に、上っ面だけの中身がスカスカなセリフだったもんなぁと妙に納得。時計も適当に選んだ3000円のものだったし、妻とはうまくいってないと言いつつ家族で仲良く焼肉に行くし(要するに妻とは普通にうまくいっている。裏切ってるけど…)。最初に十和子に会った時に、水島は直感的にわかったのだなぁと思う。
この女は騙せる…もてあそべる、と。まんまと騙されてしまう十和子も十和子なんだけども、黒崎と同じく 刺されて良かったですよね…うん…。

十和子が忘れていた記憶が戻る

私達の想像通り 黒崎は行方不明ではなく、もうこの世にはいませんでした。もちろん陣治が殺ったものだと思っていたけど、ここで色んな真実が明らかになります。黒崎を殺害したのは陣治ではなく 十和子でした。
ボコボコにされて捨てられた後、黒崎から連絡が来て舞い上がった十和子は また黒崎に騙されることに。
金の無心だけでなく また国枝に体を差し出して欲しいと。さすがの十和子も愛されていないことに気付き、心が壊れてしまった。心が壊れて制御不能になってしまい 黒崎を殺害してしまった。(こうなる前に気付いてほしかったけど…)

あの時と同じように 水島に遊ばれていたことを知った十和子は、水島を殺害しようと決めて ナイフを購入します。
(ナイフを購入している時は陣治が殺られる…と思っていたけど…)
記憶が消えているので十和子にとっては初めての犯罪という認識だったのでしょうが、陣治からすると予測出来ていた行動だった。いずれ十和子が誰かを傷付けるとわかっていたからこそ、徹底的に十和子を監視していた。(記憶が戻ると二人の関係は終わってしまうので陣治も必死だったんですね)
しかし 監視していた割には間に合わず(確信犯?)、水島は結構 刺されてしまいましたね。足を中心に刺されていたので命に別状はないにしても結構な大怪我だと思う…そのまま逃げていったけど大丈夫なのか…とか余計なことを考えたり。
ここのシーンで色々な真実が明らかになって「そう来たか~」という驚きもありつつ、それでも なぜ二人は一緒にいるんだろう?と 陣治と十和子の関係についての謎は残ったままでした。

陣治が自殺するラストシーンについて

映画「彼女がその名を知らない鳥たち」感想 -後半にネタバレあり- 意外な結末だけど 、きっと…これで良かったんだ…と思わないとツライ。(C)2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会

これに関しては 正直わからない部分も多い。自殺する必要ってあったのかな?と。十和子が自分の犯した罪をすべて思い出してしまったことで、「もう生きていたくない」と泣くシーンがある。その際に陣治は「生きなきゃだめだ。俺が助けるから」と言っている。
助ける気があるのならば自殺せずに「生きる」という選択をした方が助けることはできるような気もしてしまう。
それでも死を選ばなくてはいけない理由があったということ になります。

陣治は十和子が殺人を犯してしまった日、眠りから覚めた十和子が あまりのショックから黒崎を殺した記憶がなくなっていることを喜んでいた。恐らく記憶が残っていたら十和子は精神的に耐えられず自殺する可能性もあったので。
(人を殺してしまった罪悪感と、悪人であっても愛する黒崎に一生会えない現実に 十和子は耐えられないでしょう)

陣治は愛する十和子に生きていて欲しい気持ちから ずっと記憶が戻らないで欲しいと願っていた。もし記憶が戻った時にはこの幸せな日々が終わるとわかっていた。もし その時が来たら 陣治は十和子の罪を背負って(背負ったという体で)死のうと決めていたのだろうと思う。(十和子のために生命保険に入っているというシーンもあり、十和子の記憶が戻った時は 十和子のために最初から死ぬつもりだったのでは?と感じた…)
そうすれば 十和子に借りを作ることができる。
十和子が辛くなって死のうとする度に 陣治の顔が浮かび自殺することを躊躇するだろう。

ただ 十和子のメンタルを考えると、例え自分のために陣治が罪を背負って自殺したとしても、
「私のために陣治は亡くなってしまったのだから 私は生きなくては…」と思えるだろうか?と疑問。
「私のせいで陣治も死んでしまった。私のせいだ。もう生きていたくない」となりそうな気がしてならない…。

そう考えると、陣治は十和子のためというよりは 自分がそうしたいから死を選んだ可能性もありますね。
十和子が自分のことを異性として受け入れてくれることはないし、無精子症で十和子に子供を宿すこともできない。
(陣治は 少し子供に執着しているような気もしますが 陣治が思う十和子が幸せになれるストーリーの中に 幸せな家庭を持つ、というイメージがあるのかも)
十和子を命がけで守ることはできても、十和子自身が幸せだと感じる人生を 陣治が創ることはできないと感じたのだろうと思う。
十和子の人生において 自分の存在は邪魔である(と陣治は勝手に思っている)し、陣治にとっても十和子と一緒に居られないこの世は生きていたくないし耐えられないのだと思う。ならばいっそのこと死んでしまおう。十和子のためなら死ぬのも本望だ。ということかも?と勝手に思っています。とはいえ、色んな考察があるのでちょっとモヤモヤしますね。陣治には死なないで欲しかったな…。むしろこれからが2人の物語なのに…。

彼女がその名を知らない鳥たち、とは

映画のタイトルにもなっているので、何か意味はあるんだろうな…と思っているけど、正直に言うとよくわかりません…。難しい考察とか苦手なので。
鳥というキーワードでイメージするのは「幸せ、平和、自由、巣立ち、解放的…」のようなプラスのイメージが多い気がします。ただ「籠の中の鳥」のように、場合によってはマイナスなイメージもある。

陣治が手を広げて落ちていく時、十和子との出会いから 楽しかった日々が走馬灯として駆け巡るのだけど、この時の陣治の表情を見ると とても幸せそうでした。なのできっとプラスのイメージとして使われている気がします。
(こんなことされたら泣くに決まってる…というか意図的に泣かしにかかってるとしか思えない)

そして 落下していった陣治が見えなくなると、その直後に鳥達が空へ飛び立っていきます。
十和子はその様子を凝視していました。まるで陣治が空へ飛び立っていったように思わせる演出だと思います。
鳥たち…というのは 十和子の前に現れては飛んでいってしまった「男たち」のことかもしれませんね。

まとめ

映画「彼女がその名を知らない鳥たち」感想 -後半にネタバレあり- 意外な結末だけど 、きっと…これで良かったんだ…と思わないとツライ。(C)2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会

この作品を観て、まず最初に思った感想は「愛情って色んな形があるんだなぁ」とか「陣治、どんだけ十和子が好きなんだよ…惚れすぎだよ…なにも死ななくてもいいのに」とか、単純に「人は見た目じゃないなぁ」とか。
でも色々と考えていたら、これは結構深い話なのではないか…と思い始めてしまって 色々考えてしまいます。

陣治は十和子に一目ぼれをして毎日のように十和子に話しかけたりして 想いを伝え続けました。十和子は男性の押しに弱いのか、十和子自身に強い意志がないのか、なし崩し的に陣治と一緒に居ることが増えていきます(これは十和子らしいな、と思います)。でも、陣治と十和子の関係って男女の関係というよりは、まるで親子のような関係に近いと勝手に思ってしまいました。
陣治は十和子に対して「無償の愛」を与え続け、十和子はその愛情がどれほど深いものか理解していません。
一般的な親子関係でも 親は子供のために無償の愛を与えますが、子供が未熟なうちは その愛情に甘えつつも うっとおしいと感じたりします。親が亡くなった時に 初めて自分がどれほど愛されていたのかを知ることも多い。
陣治が空へ飛び立って 十和子の前から消えてしまった時、失ってしまったものの大きさと、自分が深く愛されていたことを初めて実感したのかもしれない。陣治がいなくなって初めて十和子は愛を知り 成長し、やっと自分の足で人生を歩けるようになれるのかもしれない。そう考えると十和子が自立した人生を送るには やはり陣治は死ぬ(十和子の前から消える)必要があったということになりますね…悲しすぎる…。

陣治が「もし 妊娠したら、男の子でも 女の子でも、それは俺だから。」と言うシーンがある。
これから十和子がどんな人生を送ることになっても、自分のことを思い出すように、忘れないで欲しいという気持ちはもちろんあると思う。
そして、もし来世があるのなら 次は男女という枠を超えた 親子のような、今度は自分が愛される側になりたいと願っているということだと思います。陣治にとっては 十和子から無償の愛を注がれるなんて幸せ過ぎますもん…そんな来世が待っているなら死ぬのも悪くないと思える。

十和子が男からDVを受けたり 利用されたりしている背景には、十和子自身が「愛」について理解していないのが大前提であると思う。愛を知っていれば相手から酷いことをされた時に「これは愛情ではない」とすぐに気付けるはずなので。
なので 十和子は「愛」を知らない女性だったということ。
「その名を知らない」というのは「愛」のことなんだろうと思います。

十和子が知らなかった「(色々な)愛」を与えて 飛んでいってしまった鳥(男)たちのお話でした。
個人的にとても好きな作品となりました。

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