8/26(月)に行われたジャパンプレミアイベントに幸運にも当選し、試写会にて鑑賞しました!
まず、結論から言ってしまうと 面白かったです!
レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットという2大スターが共演しているのもすごい。
(意外にも初共演とのことですが、タランティーノだからこそ共演させることができたのかもしれない…)
タランティーノ監督のユーモアやバイオレンスが散りばめられていて 2時間40分という長編映画ですがあっという間だったように感じました。
人によっては途中で少し飽きてしまう人もいるようですね。
恐らくですが この映画の軸となっている実在した「シャロン・テート殺害事件」を知らずに観ているからかもしれません。
この事件を知らないまま観ると、単にレオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットが演じる架空の人物の人間ドラマを淡々と観ているだけになってしまう。
(私はずっと観ていても飽きませんが…^^;)
この事件についての概要や犯人でもあるチャールズ・マンソンについても少し書いてみようと思います。
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド…とは
「昔々、ハリウッドでは……」という意味です。なので基本的にこの物語はおとぎ話なのですが、時代背景やシャロン・テート殺害事件など 実在する出来事も織り込まれています。
あの時代のあの日に、もしこの2人がいたら……というストーリー。
途中まではネタバレなしで 色々と感じたことを書いてみたいと思います。
作品詳細
製作年 | 2019年 |
---|---|
製作国 | アメリカ、イギリス |
上映時間 | 159分 |
監督 | クエンティン・タランティーノ |
出演者 | リック・ダルトン/レオナルド・ディカプリオ クリフ・ブース/ブラッド・ピット シャロン・テート/マーゴット・ロビー ロマン・ポランスキー/ラファル・ザビエルチャ ジョージ・スパーン/ブルース・ダーン マーヴィン・シュワーズ/アル・パチーノ、他 |
クエンティン・タランティーノ監督による9作目の長編作品
映画.comより
タランティーノ監督は10作品撮ったら引退すると言っていましたが、今回が9作品目となり、本作の脚本の執筆に5年もかけているそうです。監督としては10作品で引退すると言っていますが、引退後もテレビ映画やドラマなどの脚本を書いたり 舞台などはやるかも…とのことなので、今後も色んな作品が観られそうです(良かった〜)
1960年の時代背景について
映画.comより
そんなタランティーノ監督が見せたかった1960年代のハリウッドとはどんな感じなのか調べてみました。映画を観てしまうのがてっとり早いですが、簡単に言うとその頃のハリウッドは華やかで楽しい時代だった、と。華やかなストリートやカフェ、映画館、お店…。ヒッピー達がラブ&ピースのコミュニティを作り、自由に恋愛やSEX、ドラッグを楽しめていた時代。古き良き時代のハリウッド…という感じなのかもしれない。
この映画は1969年の出来事を描いているので、そんなハリウッドの華やかな時代が少しずつ終わりを迎えそうな そんなイメージです。また、その終わりを迎えるきっかけとなったのがシャロン・テート殺害事件だったともいえます。ラブ&ピースで平和な生き方をしていたはずのヒッピー達による事件でした。
1969年当時はタランティーノ監督はまだ6歳でしたので、その頃のことを思い出すというよりは 当時の事をイメージしつつ「あの頃のハリウッドは…」と語っているのが本作だと思います。
映画を観ればわかるのですが、本当にどのシーンを切り取っても絵になるし、BGMとして流れる曲も素敵だし なんか全てがとにかくカッコイイ(語彙力がなくてカッコイイとしか言えないのがツライ…)。
そこにディカプリオとブラッド・ピットが加わって更にカッコ良さがパワーアップしている。
もうこれはストーリーが理解できなくても アートとして観ても楽しめるかもしれないとすら思いました。
CGを一切使わずに 街並みや建物、車、ファッションや音楽を完璧に再現していて タランティーノ監督のこだわりが感じられます。
簡単なあらすじ
ハリウッド、それは数多くの名作映画を世に送り出してきた知らぬ者はいないほどの映画産業の中心地。1969年は、ちょうどそんなハリウッドの黄金時代だった。リック・ダルトンは、そんな時代に活躍していたテレビ俳優。しかし、かつては栄光を欲しいがままにしていた彼も、時代の流れと共に徐々に人々に忘れられるようになっていた。そんな中、彼が再起を誓い進出したのがハリウッド。彼は常にスタントマンであり付き人であるクリスと行動を共にしていた。厳しい業界で生き抜くことばかり考えるリックと、自由気ままに生きるクリス。そんな二人は、ある日当時名を上げ始めたばかりだった監督、ロマン・ポランスキー監督と出会う。そして、その出会いが二人の人生を大きく変えていくのだった……
MIHOシネマより
実際にあった シャロン・テート殺害事件とは
1960年代にテレビの人気シリーズに出演し、その後、映画に進出した。映画『吸血鬼』で共演したのが縁で1968年1月20日に映画監督のロマン・ポランスキーと結婚したが、翌1969年8月9日、狂信的カルト指導者チャールズ・マンソンの信奉者達の一人、スーザン・アトキンスら3人組によって、一緒にいた他の3名の友人達と、たまたま通りがかって犯行グループに声を掛けた1名と共にロサンゼルスの自宅で殺害された。
マンソンはシャロンの前にその家に住んでいたテリー・メルチャーが、マンソンの音楽をメジャーデビューさせられなかったことを恨みに思っていた。当時シャロンは妊娠8か月で、襲撃を受けた際に「子供だけでも助けて」と哀願したというが、それが仇となりアトキンスらにナイフで計16箇所を刺されて惨殺された……
Wikipediaより
実在する狂信的カルト指導者 チャールズ・マンソン
売春婦をやっていた16歳の家出少女であるキャスリーン・マドックスと、カール・スコットという男の間に生まれる。[10]母親から育児放棄されたため、数か月の間、戸籍もない名無しの赤ん坊として過ごしていた期間もあったが、生を受けてから数か月後には「チャールズ」と名付けられ、その当時に母が気まぐれで結婚していた男性の姓である「マンソン」を貰い受ける。
5歳の頃に、母親とその兄(マンソンの伯父に当たる人物)がガソリンスタンドを襲撃した事によって逮捕され、懲役5年の実刑判決を言い渡されたため、祖父母の家に引き取られ育てられた。しかしその後、親戚を転々とし、最終的に孤児院に入れられた。孤児院を脱走して母に再会するが見放される。このような複雑な出自のため社会に適応できず、9歳の時犯罪に手を染めて以降1967年に釈放されるまでに人生の大半を刑務所で過ごした。
Wikipediaより
なるべくして犯罪者になってしまった…というような家庭環境ですね。家庭環境が全ての人格に影響するとは思いませんが、やはり全く関係ないことはないのだと思います。
例えば愛情を沢山もらって育てられた人と、マンソンの様な家庭環境で育った人が同じように育つとは考えにくいです。
肥料とお水と日光をたっぷり与えられれば綺麗な花が咲くけど、水も与えず踏みつけていれば花が咲く以前に育たないのと一緒です。
(念のための補足ですが、それでも本人の努力で軌道修正している人は沢山いるので マンソンを庇護する気持ちは一切ないです。むしろ許せない犯罪だと思います)
で、どういうわけかマンソンにはカリスマ性があったようで、同じように家庭や学校や社会に居場所がなく ドロップアウトした若者達をドラッグなどで洗脳し、指示を出して殺人までさせるほどエスカレートしていきます。(ここまでくるとヒッピーというよりもカルト的な宗教団体と同じですね)
そもそも、恨んでいたのはシャロンの前にその家に住んでいたテリー・メルチャーという人物だったはずなのに、この事件を実行してしまうのが恐ろしい。
映画の中でシャロンの家を訪ねてくるシーンがあり、テリーがここに住んでいないことは認識していましたが、もう殺す相手は誰でも良かったのだと思います…。要はハリウッドで成功している人間に対しての嫉妬などもあったのだと思う。
(テリーに対しても逆恨みや被害妄想が強そうなので、いずれにしても真っ当な思考回路ではないですね)。
基本的にネタバレを気にせずに書いているので、未見の方でネタバレしたくない方はご注意ください。
人気のピークを過ぎたTV俳優リック・ダルトン
(レオナルド・ディカプリオ)
映画.comより
リック・ダルトンは昔、ハリウッドの西部劇で一世を風靡した人気俳優でしたが、現在は脇役(しかも悪役)やチョイ役をやったりする いわゆる落ち目の俳優なのですが、もうこのリックが本当に本当に私は好きです。
(レオ様が好きだからというのも勿論あります笑)
ハリウッドで落ち目になった俳優は イタリアに行き西部劇やアクション映画に出たりして出稼ぎをする時代だったそうで、冒頭でも「イタリアに行ってマカロニ・ウエスタンにでも出たらどう?」と勧められたりしているんですが(要は落ち目の俳優と言われている様なものですね)、そのことにショックを受けて
「俺はもう落ち目なんだ…もうだめだ…」と落ち込んでクリス(ブラッド・ピット)の肩でシクシク泣いたりする。(しかも外で…笑)
お酒を飲みすぎてセリフを飛ばしてしまうシーンでは「俺はもうダメだー!」と自己嫌悪に陥って暴れて泣きまくる。(もうお酒は飲まない!と言いつつ一口飲んじゃったりして更に自己嫌悪して泣いたり…)
プロ意識の高い女の子(子役)の前でも読んでいる小説の話をしながらシクシク泣いたり、同じく完璧な悪役を演じて「今まで生きてきた中で一番良い演技だった」と子役に演技を褒められたら 今度は嬉し過ぎて泣いてしまう…。
リックはすぐに泣いちゃうし情けない人間にも見えるのだけど、根が真面目だからこその焦りとか弱さだとも思えるし、その人間くさい感じが一斉を風靡した人気スターでも私たちと同じ ただの人間なんだなぁって思わせてくれて すごく親近感が湧く役柄だと思う。
自己嫌悪に陥って泣いたりして、とにかく精神的に追い込まれている感じをディカプリオが完璧に演じているのがすごい。リック本人は完全に追い込まれているし 本気で「もう おしまいだ!」って思っているんだけど、それを観ている私達(観客)はリックの緊迫した感じとは裏腹に 微笑ましく見守り たまに笑っちゃったりもするし、子役に褒められただけで嬉し泣きするシーンでは なぜかこちらまで感動してウルウルしてしまった。
「褒めてもらって良かった、本気出せばできるんだね…まだまだ現役で頑張れるね…本当に良かった」と自分でもよくわからない優しい気持ちになったり…。
カッコイイのに弱くて すぐに泣いてしまうリックのキャラクターとディカプリオの相性が本当に良かったからこそだと思う。この役をコメディ俳優がやると多分わざとらしくなりそうな気がするので…。さすがレオ様 という感じです。
リックのスタントマンのクリス・ブース
(ブラッド・ピット)
映画.comより
そんな頼りなくて可愛いリックの相棒(スタントマン)をしているのがクリス・ブースです。
(スタントマンとは役者に代わって危険なシーンをこなす替え玉のような役割)
今と違って 当時は役者とスタントマンは家族のような濃い関係で、映画内でも兄弟以上夫婦未満…のような台詞がありました。
また 色々な役者の替え玉はやらずに、一人の役者に対してずっとスタントをしていくので付き人の様な関係でもあります。クリスもリックの付き人の様に 車での送り迎えや雑用、話し相手、慰めたり励ましたり…となんでもやっている(笑) しかもそれを苦に思っている感じもなくて ごく自然に当たり前の様にリックと人生を歩んでいる感じですね。
リックを乗せている時は安全運転だけど、一人の時には車を飛ばしたりするシーンがあるので リックのことをとても大事に想っている感じが伝わります。
(この車を飛ばすシーン、音楽と相まってすごくカッコよかった!)
クリスはリックとは正反対で楽観主義な性格で あまりくよくよ悩まないタイプ。 仕事が減ってることもさほど気にしていない。
(リックが落ち目で仕事が減れば自分の仕事も減るんだけど、悩んでる感じはなかった)
オンボロのトレーラーハウス?みたいな所に愛犬と暮らしているんだけどクリス本人が全く悩んでいないので 豪邸に住んでいるリックよりもなぜか幸せそうに見えます(笑)
雑に作ったマカロニチーズがなぜかオシャレで美味しそうに見えるし、愛犬のご飯もかなり雑に与えているのだけど、愛犬に対してもすごく愛情深いことがわかるので、クリスは肉体面だけでなく精神面も強くて優しい人なのだとわかる。
そして正義感も強くて曲がった事が嫌い。相手が間違っている場合は容赦なくボコボコにする(笑) 絶対にリックよりモテるタイプなんだろうなぁと思います。
(私はリックの方が好きですが笑)
リックの出ている番組を一緒に観ながら「ここはカッコいいシーンだな」とか言っいるのは微笑ましくて特に好きなシーンです。映画の中でテレビを観ている2人を見る…というタランティーノ監督っぽいユーモアのあるシーンですね。
(余談ですが明石家さんまが自分が出ているテレビ番組を 延々と後輩達に見せるというエピソードを思い出してしまったり…笑)
ブルース・リーとやり合うアクションシーンもCGなしで本当にカッコイイし、アンテナを修理するシーンで上半身裸になるシーンがあるけど、55歳とは思えないほど筋肉バキバキで驚きました。
ディカプリオとの相性がすごく良かったように思うし、2人がダラダラと話したり飲んだりしているだけなのに ずっと観ていたいと思ってしまうのが本当に不思議(笑)
まとめ
映画.comより
色々と思う部分があり過ぎてまとめるのが難しいのだけど、この映画はタランティーノ監督の作品の中で私的には一番好きです。なんかとても素直で無邪気なタランティーノ監督の頭の中を映像化している様な感じがします。
私は観る前にシャロン・テート殺害事件のことや、当時の時代背景や犯罪者であるチャールズ・マンソンについても調べた上で映画を観たので、ストーリーが進むにつれ 少しずつハラハラしながら観ていました。いつあの事件が起こってしまうのだろう?…と。
1960年代の華やかで自由で楽しい いわゆる古き良き時代のハリウッドが、この事件がきっかけで(と言っても過言ではない)もうすぐ終わるんだなぁ…という視点で観ていました。
側から見るとそこまで考え込まなくても良いのに…と思っちゃうリックと、全然悩まない楽天家のクリス。この凸凹コンビが この事件とどう関係していくのか??と疑問に思いながらストーリーを観ていた感じなので、ラストの展開には本当にビックリしました(笑)
私の勝手な思い込みや先入観のせいだったりもするんですが…。
このストーリーはそもそも「おとぎ話」であることをすっかり忘れていて、私の中ではシャロン・テートの事件のラストは絶対変わらないと勝手に思い込んでいたんですよね…^^;
(要するに最終的にはシャロン・テートとその友人達が殺されてしまう、という結末は変わらないと思っていたんです)
まさかあそこまで返り討ちにするなんて想像できましたか?(笑)
私は全く想像出来ませんでした!
もうなんていうか…クリス…相手は女の子だし…それはやり過ぎなのでは……と思ったり、事前にこの集団が悪党だと知っているからこそ いやいや!コイツらは悪党だからもっとやっちまえ!…と思ったり。
(クリスは皮肉にも彼らがよく使っているドラッグでラリっている状態だったというのも面白いですよね…。ラリっていても無敵というのがすごい…あと犬が賢い…)
リックに関してはプールでプカプカ浮いているだけのまったりした時間を過ごしていただけなのに、最終的には火炎放射器ですよ?
一番驚いているのはやられたヒッピー達でしょうけど、観ているこちら側も目を背けたくなるような暴力的なシーンで「うわぁ〜」って思ったり、プールで浮かんでいるリックが驚いたり火炎放射器を使っているシーンでなんか可笑しくて笑ってしまったり、短時間の間に色んな感情を引き出されたように思いました(笑)
正直、すごく疲れました…w 感情のアップダウンがすごかった…(笑)
有名な監督と女優がお隣さんだったのに 話す機会もなかったリックですが、最後はお友達になれた…ということかな?とりあえずハッピーエンドでスッキリです(笑)
なんていうか、現実というのはほんの些細なことで全く違う未来になるのだろうなぁと改めて思うし、タランティーノ監督の犯人達に対する復讐だったり 映画の中だけでもハッピーエンドにしたいという願望にも感じ取れましたね。
何回も観るとまた色んな発見がありそうなので、何度も映画館に行ってしまうと思います。
とても良かったです。