洋画・映画の感想

映画「セールスマン」ネタバレ感想

アカデミー賞で外国語映画賞を受賞しているとのことで観てみました。
もちろんですが私のよく知っているセールスマンという職業は登場しません。
一見よくあるテーマのようでそうではないし、いわゆる映画らしい派手さがなくて、それがより現実味があって怖い。
終始モヤモヤとする映画でした。

作品詳細

製作年2016年
製作国フランス・イラン
上映時間123分
監督・脚本アスガー・ファルハディ
出演者シャハブ・ホセイニ
タラネ・アリシュスティ

簡単なあらすじ

作家アーサー・ミラーの戯曲「セールスマンの死」の舞台に出演中の夫婦。夫は教師をしながら、小さなの劇団で妻とともに俳優としても活動している。 ある日、引っ越ししたばかりの自宅で、夫の留守中に妻が何者かに襲われ、ふたりの穏やかだった生活は一変する。事件を表沙汰にしたくないと警察への通報を拒否する妻の態度に納得できない夫は、自分自身で決着をつけるべくひそかに犯人捜しを続ける。 演劇と犯人探し、夫婦の感情のずれがスリリングに絡み合い、やがて物語は思わぬ展開に…。
filmarksより

基本的にネタバレを気にせずに書いているので、未見の方でネタバレしたくない方はご注意ください。

タイトルのセールスマンの意味

エマッドは教師であり、妻と舞台に立つ俳優。映画の中で演じられる舞台が「セールスマンの死」というお話でした。
冒頭からこの舞台がまさに上演されることがわかるので、どうやらこの舞台と同時進行で映画も進行していくのだろうなぁ…とわかります。
この「セールスマンの死」という話を知っているともっと映画のストーリーがわかりやすかったのかも?しれない。
簡単なあらすじを調べてみると、あるセールスマンの男と、その家族の絶望とかが描かれているようです。いわゆるアメリカン・ドリームの行く末…のような?
今回の映画のテーマとは少し逸れているようにも思うけど、主人公でもあるエマッドの心境と近いものがあるのだとは思う。

家が崩壊?!

住んでいる家が突然崩壊しそうになり、家を追い出されてしまう。
住人が慌ただしく理解も出来ないまま外へ逃げ出すシーンで、窓ガラスにピキピキとヒビが入る。家が壊れるかもしれない、と同時に、この夫婦の関係も壊れそうになる、という描写ですね。嫌な予感がするなぁと思わせるシーンでした。

引っ越し先での被害

どうやら引っ越し先の元住人のせい?で妻であるラナは被害に遭ってしまうのだけど、どのような被害に遭ったのか詳細はわかりませんでした。
普通に考えるとレイプされてその際に頭も負傷させられたということなのだと思うけど、暴力的なシーンもなくラナ本人も「記憶にない」と言っている。(言いたくないということなので、要するに酷い目に遭ったことはわかります)

イランではまだまだ女性軽視の文化が残っているようで、女性が被害に遭ったと訴えることは恐らく大変な屈辱と心労が伴うものだと予想できます。
日本でも被害者が声を上げると、被害者に落ち度はなかったのかと逆に追求されたり、周りから奇異な目で見られるなどの いわゆるセカンドレイプがあるけども、さすがに最近は被害に遭った時は堂々とまではいかなくとも、少しずつ声を上げられるようにはなってきているのではないかな、と。
そう考えると泣き寝入りする人がまだまだ居るということでツライですね。
この辺の文化の違い?もあるのでラナが警察に行かない、と言った時は
「なんで?」って思ってしまったし、エマッド同様、悶々とした怒りが溜まっていく…
もちろんこの「怒り」は犯人に向けての怒りなのですが、犯人が見つからなければこの怒りを解決することは出来ないので、ストレスが溜まっていきます。

すれ違う夫婦

警察には行きたくない。でも事件のことは簡単には忘れられない…
と精神が不安定になるラナ。(まぁ当然ですね)
家に一人でいるのが怖い、でも行く場所がない。被害に遭った恐怖からシャワーも入れない、、という状況になってしまう。
そんなラナに対して日々、発散できない怒りが少しずつ蓄積されているエマッドは
「警察に行くか、忘れるかのどっちかにしろ」みたいな冷たい言葉を言ってしまいます。
(気持ちはわからんでもない。私もラナに対して警察に行ってほしい、戦ってほしいって思ってしまったので)
でもラナの気持ちもすごくわかってしまう。これ以上傷つきたくない気持ちと、トラウマになってしまい前のように明るくなれない気持ちも。
一度ヒビが入ってしまったら、前のようには戻れない…ツライ…

犯人が意外と弱そうだった

で、結局モヤモヤが解消されず怒りを抑えられないエマッドは独自で犯人探しをするんだけど、割とあっさりと犯人が判明します。(証拠残しすぎ…トラックを残したままって…)
まぁ、車のキーを残してしまったので置いていくしかないですが…。
で、この犯人が、心臓が悪い老人でした。
正直、本当に申し訳ないけど「勝てそう、、、」って思ってしまった。
いや、シャワー浴びてて突然のことだから実際は動揺するだろうし勝てないんだろうけども。
(最初はエマッドだと勘違いしていたそうだし…)
それにしてもあの弱そうな感じで、流血するほどの怪我をさせられるのか…この辺は少し不思議でした。
あと「そそられちゃった」っていうのが納得できない部分ですね。
単純に魔が差したということなのだろうけど…
追求している最中もいつ本性出すんだろう、反撃してきそうって思ってたけど、最後まで大人しい老人だった…。結局、持病が悪化して?亡くなってしまいます。
(復讐などしなくてもちゃんと天罰が下ります的な意味があるのか、あっさりと亡くなってしまいました)

まとめ

全体的に静かな映画でしたが、終わった後モヤモヤと考えてしまう映画でした。
エマッドの怒りとラナの弱さ、両方ともなんとなく理解できてしまうので どちらかに感情移入するということではなくて、ただただ不幸な目に遭わされて災難…ツライ…と思ってしまう。
そもそも家が崩れそうになってしまうところから不幸は始まっているので。
ラナが復讐をしようとするエマッドを止めた時も
「なぜ?暴力で叩きのめすわけでもなく、家族に真実を伝えるのだけでもダメなの?」って思ってしまったけど、ラナとしてはどういった心境だったのだろうか…。
犯人に対して許すという感情よりは、自分がされたことを知られるのが恥、という感覚があるのかもしれない。
確かに夫にも何をされたのか詳細を伝えていないのだから その可能性もあるかもしれない。
ラストの雰囲気からして、この夫婦は多分良い関係には戻れなくなってしまったかも…と予感させるものでした。
「修復するよりも最初からやり直した方がマシなのでは?」
「やり直してコレなんだよ」というシーンがあったけど、この夫婦も同じ道を辿りそう…
後味があまり良くない映画でした。

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