戦争系の映画は観ていて心が疲れてしまうので観る時はそれなりの覚悟を持って観ているのだけど、今回も観終わった後に疲弊してしまった。なによりもこれが実話だということに驚いてしまう。一人で160人もの人を狙撃した 狙撃兵の話。
この映画は戦争映画ではあるんだけど、戦争から戻ってきた後の普通の暮らしについても触れている。帰ってきた後の人生の方が長いのだから当然なのだけど…。
「戦争を経験して、影響を受けない人などいない…」と言うシーンがあるけど、本当にそうだと思うし、難しいことはよくわからないけど とにかく戦争って本当にやる意味がない。なくなってしまえば良いのにって本当に思う。命を奪い合わないと決着つかないほどのことなら いっそ恨みっこなしのジャンケンで決着つければいいのに…って正直思う(無茶苦茶なことを言ってるけど命を奪い合う位ならジャンケン方がマシじゃない?程度の意味です)。
作品詳細
製作年 | 2014年 |
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製作国 | アメリカ |
上映時間 | 132分 |
監督 | クリント・イーストウッド |
脚本 | ジェイソン・ホール |
出演者 | ブラッドリー・クーパー /役名:クリス・カイル シエナ・ミラー /役名:タヤ・カイル ルーク・グライムス /役名:マーク・リー ジェイク・マクドーマン /役名:ビグルス ケビン・ラーチ /役名:ドーバー コリー・ハードリクト /役名:“D”ダンドリッジ ナビド・ネガーバン /役名:アル=オボーディ師、他 |
簡単なあらすじ
米軍史上最多160人を射殺した男。国を愛し、家族を愛し、それでも戦場を愛した男――。
ある日、9.11の惨劇を目撃したクリス・カイルは、自ら志願し、米海軍特殊部隊ネイビー・シールズに入隊をする。イラク戦争のさ中、クリスが命じられた任務は「どんなに過酷な状況でも仲間を必ず守ること。」その狙撃の精度で多くの仲間を救ったクリスは“レジェンド”の異名を轟かせるほどになる。しかし、彼の腕前は敵の知るところとなり、“悪魔”と恐れられ、その首には2万ドルの賞金を掛けられ、反乱兵たちの標的となってしまう。
一方、クリスの無事を願い続ける家族。平穏な家族との生活と想像を絶する極限状況の戦地…過酷なイラク遠征は4回。愛する家族を国に残し、終わりのない戦争は幾度となく、彼を戦場に向かわせる。度重なる戦地への遠征は、クリスの心を序々に蝕んでいく…
息つく暇もない極限の緊迫感で誰もの心を打ち抜く―伝説的スナイパーの半生を描いた、衝撃の実話。世界を震わせる真実のドラマが幕を開ける――。
filmarksより
基本的にネタバレを気にせずに書いているので、未見の方でネタバレしたくない方はご注意ください。
伝説と呼ばれたクリス・カイル
出典元:映画『アメリカン・スナイパー』オフィシャルサイトより
この映画の主人公でもあるクリス・カイルは 父親から狩猟の技術を教え込まれながら成長し ロデオに明け暮れる生活をしていた。婚約者はそんなカイルに愛想を尽かして浮気をし、そのまま別れてしまう(元々浮気性だったらしいので別れて正解かな?)。
カイルはアメリカ大使館爆破事件をきっかけに海軍へ志願。アメリカ同時多発テロ事件をきっかけに戦争が始まり イラク戦争で狙撃兵として派遣された際に 米軍史上最多の160人を射殺し、伝説(レジェンド)と呼ばれるように。映画の中であっても相手側の人間を次々と狙い撃ちしていく映像はなかなか重たかった。子供の頃に観ていたらどこか非現実的でシューティングゲームの様に感じて、弾が当たれば「ヨシ!」って思ってしまったかもしれないけど、実際は相手側にも恋人や家族がいるかもしれない一人の人間なんだよな…って思うと胸が痛くなる。誰だって殺し合いなんてしたくないのに…。
女性や子供であっても武器を持ち 仲間を襲おうとしているのであれば射殺しなくてはいけない。子供の目の前で兵士が射殺されるシーンで、兵士の武器を手に持ってしまった子供がいたけれど、カイルと同じように「武器を置いて…お願い…」と祈ってしまった。一般人や子供が犠牲になっている状況が本当に辛かった。
カイルの妻 タヤ
出典元:映画『アメリカン・スナイパー』オフィシャルサイトより
第一印象はサバサバしていて男に媚びない強い女性という印象だったけど、表面的な強さではなく芯の強さがあるなぁと感じた。結婚してすぐに戦地に派遣されるなんて、普通は耐えられないと思う(しかも結局4回も派遣されているし…)。いつ死んでもおかしくないような状況と 夫の精神が壊れていくのをただただ見守り、支えていくってとても大変なことだと思う。しかも子供も育てている訳だし。悲しいラストを思うと 奥さんにはこれからはもっともっとカイルと一緒に幸せになって欲しかったし すごく残念…。
「虐殺者」が本当にヤバイ奴だった…
出典元:映画『アメリカン・スナイパー』オフィシャルサイトより
この映画はR15指定されています。戦争映画なので銃で撃たれたり爆発したりするシーンはもちろんあります。確かにどんどん人が死ぬのでR15なのも頷けるんですが、この映画に出てくる「虐殺者」と言われている奴が本当にヤバくて、この虐殺者が出てくるシーンだけでもR15指定されるだろうなって思います。それくらい残虐だった。私は目を背けたくなったし
「コイツ…なんなんだよ、コイツ…死ね(怒)」って思った。そして、あ、これが憎しみか…って気付いてしまった。戦争ってこういう憎しみが増幅したものなんだなって改めて思う。頭でわかっているつもりでもやっぱり憎いという気持ちは存在してしまうし虐殺者には虐殺者の憎しみがあり正義もあるんだろうな、と。それでも!それでも!子供には罪はないと思う。この理不尽さも戦争なのでしょうね。
敵スナイパー「ムスタファ」
出典元:映画『アメリカン・スナイパー』オフィシャルサイトより
元オリンピック射撃選手だそうで。伝説と呼ばれているカイルもムスタファに狙われて何度か危ない目に遭ったりもしている。ラスボス的な存在がいることで、すごく映画っぽくなりますが この人も実在しているとのこと。ただ、映画なので多少フィクションもあるようですね。実際はお互いに対峙した訳ではなく、結果的にそう思われる人物(スナイパー)を射殺したそうです。映画なので多少のフィクションは仕方ないとは思います。
帰国後のカイル
出典元:映画『アメリカン・スナイパー』オフィシャルサイトより
ムスタファを射殺し任務を遂行した後 カイルは除隊し帰国したが、戦争による影響でPTSDとなり 一般的な生活に馴染めなくなってしまう。これに関してはカイル本人ということではなく 報道番組やネットでも取り上げられていたので少し覚えている。カイルだけでなくPTSDになってしまう人は沢山いたらしい。あの状況を目の当たりにして正常でいられる方が難しいと思う。PTSDの治療がどういったものか詳細は不明だけど、とにかくカイルは傷痍軍人たちと交流を続けることで少しずつ回復していった。やっぱり同じ境遇を経験した人じゃないと気持ちなんて分かり合えないだろうなと思う。残念な事にこの傷痍軍人の一人にあっけなく射殺されてしまうのだけど…。あんなに過酷な戦場を生き抜いてきたのに本当に残念すぎる。人の命は儚い…。
まとめ
出典元:映画『アメリカン・スナイパー』オフィシャルサイトより
私達は普段 戦争を意識せずに暮らしている。遠い国のどこかで争いがあることも、それによって多くの犠牲者がいることも一応 知ってはいる。ネットで調べればそれらの画像や動画も観ることはできるけど、実際に戦争を体験したわけではないので 本当のところは実はよく分かっていない。多分 この映画を観て知ったつもりになっても 事実はもっと残酷なのだろうと思うので、想像すると無性に悲しくなる。悲しくても無力過ぎて。自分達で世界を変えることなんて出来ないし…。
できるとすれば今の平和に感謝しながら清く正しく生きることくらいですよね…(一般人の場合は)
戦争という大きな波の中で 大切な仲間を失う。自分が守れなかった罪悪感から もっともっと頑張らねば…救わなければ…って気持ちに囚われてしまうのは、ハッキリ言ってカイル自身はタヤが気付くずいぶん前から病気だったのだろうと思ってしまう。人の命を奪ったり奪われるかもしれない任務…普通だったらやりたくないし逃げ出してしまうと思うけど、カイルは正義感が強くて真面目すぎたのかもしれない、と思う。
心が重たくなる映画だったけど、こういう事実があるということが知れて良かったと思う。